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June 7, 2012 Vol. 366 No. 23

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基底細胞母斑症候群患者のヘッジホッグ経路の阻害
Inhibiting the Hedgehog Pathway in Patients with the Basal-Cell Nevus Syndrome

J.Y. Tang and Others

背景

ヘッジホッグシグナル伝達の調節異常は,基底細胞癌の基礎にあるきわめて重要な分子異常である.ビスモデギブ(vismodegib)は,局所進行基底細胞癌と転移性基底細胞癌に客観的奏効をもたらす,新規の経口ヘッジホッグ経路阻害薬である.

方 法

2009 年 9 月~2011 年 1 月に,3 ヵ所の臨床施設で,基底細胞母斑症候群患者を対象に,ビスモデギブの抗基底細胞癌効果を検討する無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行った.主要エンドポイントは,3 ヵ月後の,ビスモデギブとプラセボとの比較で,外科的切除の適応となる(手術適格)新たな基底細胞癌の発生率の低下とした.副次的エンドポイントは,既存の基底細胞癌の縮小などとした.

結 果

登録後,平均 8 ヵ月間(1~15)追跡した 41 例において,手術適格な,新たな基底細胞癌の患者あたりの発生率は,ビスモデギブ群のほうがプラセボ群よりも低く(各群で年間 2 例 対 29 例,P<0.001),既存の臨床的に著明な基底細胞癌の大きさ(最長径の合計のベースラインからの変化率)も,ビスモデギブ群のほうが縮小した(-65% 対 -11%,P=0.003).一部の患者では,すべての基底細胞癌が臨床的に退縮した.ビスモデギブ治療期間に進行した腫瘍はなかった.ビスモデギブをルーチンに投与した患者では,グレード 1 または 2 の有害事象として,味覚の喪失,筋痙攣,脱毛,体重減少が認められた.全体で,ビスモデギブ群の 54%(26 例中 14 例)が,有害事象のために投与を中止した.1 ヵ月の時点で,ビスモデギブの使用により,基底細胞癌によるヘッジホッグ標的遺伝子の発現が 90%低下し(P<0.001),腫瘍細胞の増殖が減少していたが,アポトーシスに影響はみられなかった.臨床的に退縮した基底細胞癌の部位から採取された生検検体の 83%において,残存する基底細胞癌は検出されなかった.

結 論

ビスモデギブは,基底細胞母斑症候群患者の基底細胞癌の腫瘍量を減少させ,新たな基底細胞癌の増殖を抑制する.治療を行った患者の半数以上が治療に伴う有害事象により中止にいたった.(Genentech 社ほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00957229)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2012; 366 : 2180 - 8. )