February 9, 2012 Vol. 366 No. 6
パーキンソン病患者における太極拳と姿勢の安定性
Tai Chi and Postural Stability in Patients with Parkinson's Disease
F. Li and Others
パーキンソン病患者は著しい平衡障害を呈し,機能的能力の低下,転倒リスクの増加につながる.医療提供者は通常運動を推奨するが,効果が実証されたプログラムはほとんどない.
無作為化試験において,個別化された太極拳のプログラムによって特発性パーキンソン病患者の姿勢制御が改善するかどうかを検討した.ホーエン-ヤールの重症度分類の尺度(1~5 で,数字が大きいほど重症であることを示す)が 1~4 のパーキンソン病患者 195 例を,以下の 3 群のいずれかに無作為に割り付けた:太極拳群,レジスタンストレーニング群,ストレッチ群.患者は,60 分の運動セッションに週 2 回,24 週間参加した.主要転帰は,安定性の限界を調べる検査でのベースラインからの変化量とした(最大変位と方向制御,範囲 0~100%).副次的転帰は,歩行と筋力の測定値,ファンクショナルリーチテストとタイムアップアンドゴーテストのスコア,統合パーキンソン病評価尺度(Unified Parkinson's Disease Rating Scale)の運動スコア,転倒回数などとした.
太極拳群では,レジスタンストレーニング群,ストレッチ群と比較して,最大変位(ベースラインからの変化量の群間差はそれぞれ 5.55 パーセントポイント,95%信頼区間 [CI] 1.12~9.97;11.98 パーセントポイント,95% CI 7.21~16.74),および方向制御(それぞれ 10.45 パーセントポイント,95% CI 3.89~17.00;11.38 パーセントポイント,95% CI 5.50~17.27)の成績が一貫して優れていた.また,太極拳群では,すべての副次的転帰の成績がストレッチ群よりも優れており,ストライド長とファンクショナルリーチの成績はレジスタンストレーニング群よりも優れていた.太極拳群の転倒の発生率は,ストレッチ群と比較すると低かったが,レジスタンストレーニング群との比較では低くはなかった.太極拳トレーニングの効果は介入開始から 3 ヵ月の時点で維持されていた.重篤な有害事象はみられなかった.
太極拳トレーニングにより,軽度~中等度のパーキンソン病患者の平衡障害が軽減し,運動耐容能の改善と転倒の減少という付加的な利益が得られると考えられる.(米国国立神経疾患・脳卒中研究所から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00611481)