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October 25, 2012 Vol. 367 No. 17

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進行癌に対する化学療法の効果に関する患者の期待
Patients' Expectations about Effects of Chemotherapy for Advanced Cancer

J.C. Weeks and Others

背景

転移性の肺癌または大腸癌は,化学療法によって生存期間が数週間から数ヵ月延長し,症状が緩和される可能性があるが,治癒は得られない.

方 法

癌治療転帰調査・監視(CanCORS)研究(全米規模の前向き観察コホート研究)の参加者で,癌診断後 4 ヵ月の時点で生存しており,新たに診断された転移性(IV 期)の肺癌または大腸癌に対して化学療法を受けた 1,193 例を対象とした.化学療法によって治癒する可能性があるという期待をもつ患者の割合を明らかにするとともに,この期待に関連する臨床的因子,社会人口学的因子,医療制度的因子を同定することを試みた.データは診療録の包括的な再検討のほか,専門の面接者による患者調査から得た.

結 果

全体で,肺癌患者の 69%と大腸癌患者の 81%が,化学療法によって癌が治癒する可能性はまったくないことを理解しているという回答をしなかった.多変量ロジスティック回帰では,化学療法に関する誤った考えを報告するリスクは,大腸癌患者のほうが肺癌患者よりも高く(オッズ比 1.75,95%信頼区間 [CI] 1.29~2.37),非白人患者やヒスパニック系患者では非ヒスパニック系白人患者よりも高く(ヒスパニック系患者のオッズ比 2.82,95% CI 1.51~5.27;黒人患者のオッズ比 2.93,95% CI 1.80~4.78),医師とのコミュニケーションについてきわめて良好と評価した患者では,あまり良好でないと評価した患者よりも高かった(最低三分位群に対する最高三分位群のオッズ比 1.90,95% CI 1.33~2.72).教育水準,機能状態,意思決定における患者の役割と,化学療法に関するそのような誤った考えとの関連は認められなかった.

結 論

不治の癌に対して化学療法を受けている患者の多くは,化学療法によって治癒する可能性は低いことを理解していない可能性があり,そのため,十分な情報に基づいて,自身の意向に沿った治療を決定する能力に欠けているおそれがある.医師は患者の理解を深められるかもしれないが,これは医師に対する患者満足度の低下という代償を伴う可能性がある.(米国国立がん研究所ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2012; 367 : 1616 - 25. )