クリプトコックス髄膜炎に対する抗真菌薬併用療法
Combination Antifungal Therapy for Cryptococcal Meningitis
J.N. Day and Others
クリプトコックス髄膜炎に対しては抗真菌薬併用療法(アムホテリシン B デオキシコール酸塩とフルシトシン)が推奨されているが,アムホテリシン B 単独療法よりも死亡率が低下することは示されていない.われわれは無作為化比較試験において,フルシトシンまたは高用量フルコナゾールを高用量アムホテリシン B と併用することにより,14 日,70 日の時点での生存が改善されるかどうかを検討した.
ヒト免疫不全ウイルスに感染しているクリプトコックス髄膜炎患者に対する導入療法について,無作為化 3 群比較非盲検試験を行った.全患者にアムホテリシン B を 1 日 1 mg/kg 体重で投与し,投与期間は第 1 群は 4 週間,第 2 群と第 3 群は 2 週間とした.同時に,第 2 群にはフルシトシンを 1 日 100 mg/kg で 2 週間投与し,第 3 群にはフルコナゾール 400 mg を 1 日 2 回,2 週間投与した.
299 例を登録した.14 日目,70 日目までに発生した死亡は,アムホテリシン B とフルシトシンの併用群のほうが,アムホテリシン B 単独群よりも少なかった(14 日目までの死亡 15 例 対 25 例,ハザード比 0.57,95%信頼区間 [CI] 0.30~1.08,非補正の P=0.08;70 日目までの死亡 30 例 対 44 例,ハザード比 0.61,95% CI 0.39~0.97,非補正の P=0.04).フルコナゾールとの併用群では,単独群と比較して,生存に対する有意な影響は認められなかった(14 日目までの死亡のハザード比 0.78,95% CI 0.44~1.41,P=0.42;70 日目までの死亡のハザード比 0.71,95% CI 0.45~1.11,P=0.13).アムホテリシン B とフルシトシンの併用は,脳脊髄液の酵母のクリアランス速度の有意な上昇と関連していた(-0.42 log10 コロニー形成単位 [CFU]/mL/日 対 第 1 群 -0.31 log10 CFU/mL/日,第 3 群 -0.32 log10 CFU/mL/日,両比較において P<0.001).有害事象の発生率は全群で同程度であったが,好中球減少症の頻度は併用療法を受けた患者のほうが高かった.
クリプトコックス髄膜炎患者に対するアムホテリシン B とフルシトシンの併用療法は,アムホテリシン B 単独療法と比較して,生存の改善と関連していた.アムホテリシン B とフルコナゾールの併用には,生存への有益性は認められなかった.(ウェルカム・トラスト,英国感染症学会から研究助成を受けた.Controlled-Trials.com 番号:ISRCTN95123928)