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April 25, 2013 Vol. 368 No. 17

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ホスファチジルコリンの腸内細菌代謝と心血管リスク
Intestinal Microbial Metabolism of Phosphatidylcholine and Cardiovascular Risk

W.H.W. Tang and Others

背景

食餌中のホスファチジルコリン(レシチン)のコリン部分の腸内細菌代謝と冠動脈疾患とのあいだに,アテローム性動脈硬化を促進する代謝物であるトリメチルアミン-N-オキシド(TMAO)の産生を介した機構的関連があることが最近の動物実験で示されている.われわれは,ヒトにおける食餌中ホスファチジルコリンの腸内細菌叢依存的代謝,TMAO 濃度,有害な心血管イベントのあいだの関連を検討した.

方 法

健常被験者を対象として,経口広域スペクトル抗菌薬により腸内細菌叢を抑制する前後に,液体クロマトグラフィーとオンラインタンデム質量分析法を用いて,ホスファチジルコリン負荷(固ゆで卵 2 個と重水素 [d9] 標識ホスファチジルコリンの摂取)後の TMAO の血漿中・尿中濃度,血漿中のコリン濃度・ベタイン濃度を測定した.さらに,待期的冠動脈造影を受けた患者 4,007 例を対象に,空腹時の血漿中 TMAO 濃度と,追跡期間 3 年間における主要有害心血管イベントの新規発症(死亡,心筋梗塞,脳卒中)との関連を検討した.

結 果

ホスファチジルコリン負荷後,TMAO とその d9 同位体置換体の濃度には,他のコリン代謝物と同様に時間依存的上昇が認められた.血漿中 TMAO 濃度は,抗菌薬投与後に顕著に抑制され,投与を中止すると再度検出された.血漿中 TMAO 濃度の上昇は,主要有害心血管イベントのリスク上昇と関連していた(TMAO の最高四分位群 対 最低四分位群のハザード比 2.54,95%信頼区間 1.96~3.28,P<0.001).TMAO 高値は,従来の危険因子による補正後も主要有害心血管イベントのリスク上昇を予測し(P<0.001),リスクの低いサブグループにおいても同様に予測した.

結 論

食餌中のホスファチジルコリン由来の TMAO 産生は,腸内細菌叢による代謝に依存している.TMAO 濃度の上昇は,主要有害心血管イベントの新規発症リスクの上昇と関連している.(米国国立衛生研究所ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2013; 368 : 1575 - 84. )