慢性好中球性白血病および非定型慢性骨髄性白血病における発癌性 CSF3R 変異
Oncogenic CSF3R Mutations in Chronic Neutrophilic Leukemia and Atypical CML
J.E. Maxson and Others
多くの造血器腫瘍の分子的原因は,依然として不明である.こうした腫瘍のなかには慢性好中球性白血病(CNL)と,非定型(BCR-ABL1 陰性)慢性骨髄性白血病(CML)があるが,診断はいずれも顆粒球細胞の腫瘍性増殖と,他の骨髄増殖性腫瘍や骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍で生じることが知られている遺伝的原因(genetic driver)の除外に基づいて行われる.
これらの疾患の可能性のある遺伝的原因を同定するための手法として,大規模塩基配列決定と,CNL 患者と非定型 CML 患者の初代白血病細胞の,チロシンキナーゼ特異的低分子干渉 RNA または小分子キナーゼ阻害薬のパネルによるスクリーニングを組み合わせて用いた.癌遺伝子候補の妥当性は in vitro 形質転換法を用いて検証し,薬剤感受性の妥当性は初代細胞のコロニーアッセイにより検証した.
CNL 患者と非定型 CML 患者 27 例中 16 例(59%)で,コロニー刺激因子 3 受容体をコードする遺伝子(CSF3R)の活性化変異を同定した.これらの変異は CSF3R の離れた 2 つの領域に分かれており,これにより SRC ファミリー-TNK2 キナーゼまたは JAK キナーゼを介した下流のキナーゼシグナル伝達が選択的となり,キナーゼ阻害薬に対する感受性に違いが生じた.JAK 活性化 CSF3R 変異を有する CNL 患者 1 例で,JAK1/2 阻害薬ルキソリチニブ(ruxolitinib)の投与後に顕著な臨床的改善が認められた.
CNL 患者と非定型 CML 患者では,CSF3R 変異の頻度が高く,これらの腫瘍の診断に有用な基準となる可能性がある.(白血病・リンパ腫協会ほかから研究助成を受けた.)