低線量 CT による肺癌の初回スクリーニングの成績
Results of Initial Low-Dose Computed Tomographic Screening for Lung Cancer
The National Lung Screening Trial Research Team
肺癌は,癌による死亡の最大の原因である.全米肺スクリーニング試験(NLST)では,低線量ヘリカル CT を用いたスクリーニングによって,胸部 X 線を用いたスクリーニングよりも肺癌死亡率が低下することが示された.肺癌スクリーニングプログラムに情報を提供し,向上を図るため,NLST の初回スクリーニングで,スクリーニング,診断,一部の治療にどのような結果が得られたかを報告する.
米国の 33 施設で,2002 年 8 月~2004 年 4 月に,30 箱・年以上の喫煙歴がある 55~74 歳の症状のない人を登録した.参加者を低線量 CT 群と胸部 X 線群に無作為に割り付け,年 1 回のスクリーニングを 3 年間行った.結節またはその他の疑わしい所見を陽性として分類した.今回は初回スクリーニング検査の結果を報告する.
適格であった 53,439 人が試験群に無作為に割り付けられ(低線量 CT 群 26,715 人,胸部 X 線群 26,724 人),スクリーニングを受けたのはそれぞれ 26,309 人(98.5%),26,035 人(97.4%)であった.低線量 CT 群の 7,191 人(27.3%)と X 線群の 2,387 人(9.2%)が陽性であった.低線量 CT 群の 6,369 人(90.4%)と X 線群の 2,176 人(92.7%)が追跡調査での診断手技を受けた.画像検査を低線量 CT 群の 5,717 人(81.1%)と X 線群の 2,010 人(85.6%)が受け,外科的検査を低線量 CT 群の 297 人(4.2%)と X 線群の 121 人(5.2%)が受けた.肺癌と診断された参加者は,低線量 CT 群で 292 人(1.1%)であったのに対し,X 線群では 190 人(0.7%)であった(I 期 158 人 対 70 人,IIB~IV 期 120 人 対 112 人).感度と特異度は,低線量 CT でそれぞれ 93.8%と 73.4%,胸部 X 線でそれぞれ 73.5%と 91.3%であった.
NLST の初回スクリーニングの結果は,低線量 CT と胸部 X 線を用いたスクリーニングに関する既存の文献と一致することから,胸部 CT に熟練したスタッフがいる米国のスクリーニング施設では,肺癌死亡率を低下させられることを示唆している.(米国国立がん研究所から研究助成を受けた.NLST ClinicalTrials.gov 番号:NCT00047385)