ALK 陽性進行肺癌に対するクリゾチニブと化学療法との比較
Crizotinib versus Chemotherapy in Advanced ALK-Positive Lung Cancer
A.T. Shaw and Others
単群試験では,未分化リンパ腫キナーゼ遺伝子(ALK)の染色体再構成は,ALK を標的とする経口チロシンキナーゼ阻害薬クリゾチニブによる著効との関連が示されている.有効性に関して,クリゾチニブが標準化学療法よりも優れているかどうかは明らかにされていない.
白金製剤ベースのレジメンを 1 種類受けたことのある,局所進行または転移性の ALK 陽性肺癌患者 347 例を対象に,クリゾチニブと化学療法とを比較する第 3 相非盲検試験を行った.患者を,クリゾチニブ(250 mg)を 1 日 2 回経口投与する群と,ペメトレキセド(500 mg/m2 体表面積)またはドセタキセル(75 mg/m2)を 3 週ごとに静脈内投与する化学療法群に無作為に割り付けた.化学療法群で増悪をきたした患者には,別の研究の一環としてクリゾチニブへのクロスオーバーを可能とした.主要エンドポイントは無増悪生存とした.
無増悪生存期間中央値は,クリゾチニブ群で 7.7 ヵ月,化学療法群で 3.0 ヵ月であった(クリゾチニブ群の増悪または死亡のハザード比 0.49,95%信頼区間 [CI] 0.37~0.64,P<0.001).奏効率は,クリゾチニブ群で 65%(95% CI 58~72)であったのに対し,化学療法群では 20%(95% CI 14~26)であった(P<0.001).全生存に関する中間解析では,クリゾチニブ群に,化学療法群と比較して有意な改善は認められなかった(クリゾチニブ群の死亡のハザード比 1.02,95% CI 0.68~1.54,P=0.54).クリゾチニブに関連した有害事象は,視覚障害,消化器系副作用,肝アミノトランスフェラーゼ値上昇の頻度が高かった一方,化学療法では倦怠感,脱毛,呼吸困難の頻度が高かった.クリゾチニブ群では,化学療法群と比較して患者評価による肺癌の症状の軽減が大きく,全般的 QOL の改善が大きかった.
治療歴のある ALK 再構成を有する進行非小細胞肺癌患者において,クリゾチニブは標準化学療法よりも優れている.(Pfizer 社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00932893)