脳梗塞に対する組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)静脈内投与後の血管内治療と t-PA 投与単独との比較
Endovascular Therapy after Intravenous t-PA versus t-PA Alone for Stroke
J.P. Broderick and Others
中等症~重症の急性期脳梗塞患者に対しては,組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)の静脈内投与後に血管内治療が行われるようになってきているが,このような併用アプローチが,t-PA 静脈内投与単独よりも有効であるかどうかは明らかになっていない.
発症後 3 時間以内に t-PA を静脈内投与された適格患者を,追加で血管内治療を行う群と,t-PA 静脈内投与のみを行う群に 2:1 の割合で無作為に割り付けた.主要転帰評価項目は,90 日時点の修正 Rankin スケールスコア(0~6 で,スコアが高いほど障害が大きいことを示す)が 2 以下(機能的自立を示す)とした.
656 例(血管内治療群 434 例,t-PA 静脈内投与単独群 222 例)が無作為化された時点で,無益性のため試験は早期に中止された.90 日時点の修正 Rankin スコアが 2 以下の患者の割合には,治療による有意差は認められなかった(血管内治療群 40.8%,t-PA 静脈内投与群 38.7%;米国国立衛生研究所脳卒中スケール [NIHSS] スコア [8~19 は中等度に重症の脳卒中,20 以上は重症の脳卒中を示す] による補正後の絶対差 1.5 パーセントポイント;95%信頼区間 [CI] -6.1~9.1).また,事前に定義した,NIHSS スコアが 20 以上の患者のサブグループ(6.8 パーセントポイント,95% CI -4.4~18.1)と,19 以下の患者のサブグループ(-1.0 パーセントポイント,95% CI -10.8~8.8)においても有意差は認められなかった.血管内治療群と t-PA 静脈内投与群とでは,90 日死亡率(それぞれ 19.1%,21.6%;P=0.52),および t-PA 開始後 30 時間以内に症候性脳内出血を起こした患者の割合(それぞれ 6.2%,5.9%;P=0.83)も同様の結果であった.
この試験では,t-PA 静脈内投与後に血管内治療を行っても,t-PA 静脈内投与単独と比較して,安全性転帰は同様であり,機能的自立に有意差はないことが示された.(米国国立衛生研究所ほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00359424)