脳梗塞における画像診断による患者選択と血管内治療に関する試験
A Trial of Imaging Selection and Endovascular Treatment for Ischemic Stroke
C.S. Kidwell and Others
急性期脳梗塞において,脳画像検査により治療で利益が得られる可能性が高い患者を同定できるかどうか,また,血管内血栓除去によりそのような患者の臨床転帰が改善するかどうかは明らかにされていない.
大血管,前方循環の脳卒中発症後 8 時間以内の患者を,機械的塞栓除去(Merci リトリーバーシステムまたは Penumbra システムを使用)を受ける群と,標準治療を受ける群に無作為に割り付けた.患者は全員,治療前に CT または MRI による脳の検査を受けた.無作為化は,患者に回復の可能性があるペナンブラ(救済可能な組織が多く,梗塞核が小さい)があるか,ペナンブラがない(梗塞核が大きい,またはペナンブラが小さいかない)かによって層別化した.転帰は 90 日時点の修正 Rankin スケールを用いて評価した.このスケールの範囲は 0~6 で,0 が症状なし,6 が死亡を示す.
適格患者 118 例は,平均年齢 65.5 歳,登録までの平均時間は 5.5 時間であり,58%が回復の可能性があるペナンブラを有していた.塞栓除去群では,67%の患者で血行再建が得られた.90 日死亡率は 21%,症候性頭蓋内出血の発生率は 4%であり,いずれも群間で差は認められなかった.患者全体で,修正 Rankin スケールの平均スコアに塞栓除去群と標準治療群とで差はみられなかった(3.9 対 3.9,P=0.99).塞栓除去には,標準治療と比較して,回復の可能性があるペナンブラがある患者においても(平均スコア 3.9 対 3.4,P=0.23),ペナンブラがない患者においても(平均スコア 4.0 対 4.4,P=0.32),優越性は認められなかった.90 日時点の修正 Rankin スケールスコアの主要解析では,治療前の画像パターンと治療割付けとのあいだに交互作用は認められなかった(P=0.14).
神経画像診断での回復の可能性があるペナンブラから,血管内治療からとくに利益が得られる患者が同定されることはなく,また,塞栓除去の標準治療に対する優越性も示されなかった.(米国国立神経疾患・脳卒中研究所から研究助成を受けた.MR RESCUE ClinicalTrials.gov 番号:NCT00389467)