September 19, 2013 Vol. 369 No. 12
下部消化管内視鏡検査後の長期の大腸癌発生率と死亡率
Long-Term Colorectal-Cancer Incidence and Mortality after Lower Endoscopy
R. Nishihara and Others
大腸内視鏡検査と S 状結腸鏡検査により大腸癌の発生を防ぐことができるが,とくに近位大腸癌に関しては,防ぐことのできる程度と期間は明らかにされていない.
看護師健康調査(Nurses' Health Study)と医療従事者追跡調査(Health Professionals Follow-up Study)の参加者において,下部消化管内視鏡検査の受診(1988 年に開始し,2008 年まで 2 年ごとに調査)と,大腸癌発生率(2010 年 6 月まで)および大腸癌死亡率(2012 年 6 月まで)との関連を検討した.
22 年にわたり追跡した参加者 88,902 例において,大腸癌は 1,815 例,大腸癌による死亡は 474 例確認された.内視鏡検査を受けた参加者における,受けなかった参加者と比較した大腸癌の多変量ハザード比は,ポリープ切除後では 0.57(95%信頼区間 [CI] 0.45~0.72),S 状結腸鏡検査が陰性であったあとでは 0.60(95% CI 0.53~0.68),大腸内視鏡検査が陰性であったあとでは 0.44(95% CI 0.38~0.52)であった.大腸内視鏡検査陰性は,近位大腸癌の発生率の低下と関連していた(多変量ハザード比 0.73,95% CI 0.57~0.92).大腸癌による死亡の多変量ハザード比は,スクリーニング S 状結腸鏡検査後では 0.59(95% CI 0.45~0.76),スクリーニング大腸内視鏡検査後では 0.32(95% CI 0.24~0.45)であった.スクリーニング大腸内視鏡検査後には近位大腸癌による死亡率の低下が認められたが(多変量ハザード比 0.47,95% CI 0.29~0.76),スクリーニング S 状結腸鏡検査後には認められなかった.大腸内視鏡検査後 5 年以内の患者で診断された大腸癌は,大腸内視鏡検査後 5 年を過ぎた患者または内視鏡検査を受けたことのない患者で診断された大腸癌と比較して,CpG アイランドメチル化形質(CIMP)(多変量オッズ比 2.19,95% CI 1.14~4.21)およびマイクロサテライト不安定性(多変量オッズ比 2.10,95% CI 1.10~4.02)を示す傾向が強かった.
大腸内視鏡検査と S 状結腸鏡検査は,遠位大腸癌の発生率の低下と関連していた.大腸内視鏡検査は近位大腸癌の発生率の若干の低下とも関連していた.スクリーニング大腸内視鏡検査および S 状結腸鏡検査は,大腸癌による死亡率の低下と関連していた.大腸内視鏡検査のみが近位大腸癌による死亡率の低下と関連していた.大腸内視鏡検査後 5 年以内に診断された大腸癌は,5 年を過ぎてから診断された癌または内視鏡検査の受診歴なしに診断された癌よりも,CIMP やマイクロサテライト不安定性を示す可能性が高かった.(米国国立衛生研究所ほかから研究助成を受けた.)