November 14, 2013 Vol. 369 No. 20
下痢および自律神経ニューロパチーを伴う新規プリオン病
A Novel Prion Disease Associated with Diarrhea and Autonomic Nephropathy
S. Mead and Others
ヒトのプリオン病は,臨床病理学的表現型は多様であるものの,一般的に急性,多巣性の中枢神経系変性を伴う神経疾患あるいは神経精神疾患として現れ,その大部分は通常は認知症や小脳性運動失調症が占める.現在認識されているプリオン病症例の約 15%は遺伝性であり,プリオン蛋白(PRNP)をコードする遺伝子のコード領域の変異が関与している.遺伝子診断が利用可能になり,認識されている疾患のスペクトラムの拡大が進んでいる.
英国の大規模な親族集団における新規プリオン病の特性を明らかにする目的で,1 病院での 20 年間にわたる縦断的臨床評価を,系統学的,神経心理学的,神経生理学的,神経画像学的,病理学的,分子遺伝学的,生化学的検討ならびに動物伝播実験と組み合わせて行った.罹患家族 11 例のうち 6 例について詳細に調査し,5 例からは剖検標本,生検標本を得た.
PRNP Y163X 切断変異を同定した.一貫した明らかな表現型として,自律神経障害を伴う慢性下痢と,成人早期に発症する軸索型で長さに依存する,主に感覚運動性の末梢性多発神経障害があげられる.患者が 40 代・50 代になると,認知機能低下とてんかんを発症した.プリオン蛋白アミロイドの沈着は,腸や末梢神経などの末梢臓器全体に認められた.疾患末期の神経病理検査では,プリオン蛋白の沈着は,高頻度の皮質アミロイド斑,脳アミロイド血管症,タウオパチーといった形で認められた.脳組織には,独特なパターンの異常プリオン蛋白断片が認められた.実験用マウスにおける伝播実験は陰性であった.
プリオン蛋白の異常型がさまざまな末梢組織で認められ,下痢,自律神経障害,ニューロパチーに関与していた.(英国医学研究評議会ほかから研究助成を受けた.)