全ゲノム配列決定による子宮平滑筋腫の特徴の解明
Characterization of Uterine Leiomyomas by Whole-Genome Sequencing
M. Mehine and Others
子宮平滑筋腫は良性であるが,何百万人もの女性の健康に影響を及ぼす.関与する分子的機序をよりよく理解することで,病変の予防と治療の手がかりが得られる可能性がある.
女性 30 例から,子宮平滑筋腫 38 個と,対応する正常子宮筋層を採取し,全ゲノム配列決定と遺伝子発現プロファイリングを行った.
複数の独立した腫瘍結節に同一の変異が認められたことから,これらの結節は共通の起源をもつことが示唆された.平滑筋腫に共通する特徴は,クロモスリプシス(chromothripsis,遺伝子の粉砕)に類似する複雑な染色体再構成であった.これらの再構成は,複数の染色体切断とランダムな再構築という単一イベントによってもっともよく説明された.再構成は,HMGA2 および RAD51B 座位の転座や COL4A5–COL4A6 座位の異常などの,平滑筋腫の発生における役割と一致する組織特異的な変化をもたらし,また,正常な TP53 アレルの存在下で発生した.一部の例では,単一の腫瘍細胞系統において,別個のイベントが 2 回以上発生していた.
子宮平滑筋腫における染色体異常の主要な原因は,クロモスリプシス(複数のゲノム領域に局所的な欠失と再構成をもたらす単一のゲノムイベント)に類似した,染色体の粉砕と再構築である.このことからわれわれは,これらのイベントを介して組織特異的な腫瘍促進性変化が形成されると,腫瘍が発生する,という説を提案する.クロモスリプシスは,これまで進行性癌に関連するとされてきたが,平滑筋腫において高率に認められることから,良性腫瘍の発生と進行にも関与することが示唆される.単一系統の子宮平滑筋腫細胞から,複数の異なる腫瘍が発生するきっかけがもたらされる可能性があることが観察された.(フィンランドアカデミー センターオブエクセレンスプログラムほかから研究助成を受けた.)