VPS45 の変異に関連する先天性好中球機能異常症候群
A Congenital Neutrophil Defect Syndrome Associated with Mutations in VPS45
T. Vilboux and Others
好中球は主要な貪食細胞で,細菌感染と真菌感染に対する防御を担う.遺伝的な原因による好中球機能異常は,重症感染の素因を付与するが,その一方で小胞輸送,造血,自然免疫を制御する新たな機序を明らかにする.
好中球減少,好中球機能不全,骨髄線維化,腎肥大を呈する 5 家族の小児 7 例の臨床評価を行った.原因遺伝子を同定するため,一塩基多型アレイ,全エキソーム塩基配列決定,免疫ブロット法,免疫蛍光法,電子顕微鏡検査,リアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応法,免疫組織化学,フローサイトメトリー,線維芽細胞運動性アッセイ,アポトーシス測定,ゼブラフィッシュモデルを用いて,ホモ接合性マッピングを行った.変異を有する線維芽細胞に非変異遺伝子を移入する修正実験を行った.
全 7 例が,エンドソーム系を介した膜輸送を制御する蛋白をコードする VPS45 にホモ接合性変異(小児の出身民族によって,Thr224Asn または Glu238Lys)を有していた.VPS45 蛋白質の濃度は低下しており,VPS45 に結合するパートナーであるラベノシン 5,シンタクシン 16 の濃度も低下していた.VPS45 欠損を呈する好中球と線維芽細胞では,表面上の β1 インテグリンの濃度が低下していた.VPS45 欠損を呈する線維芽細胞では,特徴として運動性の障害とアポトーシスの増加が認められた.vps45 欠損ゼブラフィッシュモデルでは,ミエロペルオキシダーゼ陽性細胞(すなわち好中球)の顕著な減少が示された.患者の細胞に非変異の VPS45 を移入したところ,運動性の障害が修正され,アポトーシスが減少した.
好中球機能不全を呈する新たな免疫不全症候群の基盤には,VPS45 の両アレル変異によるエンドソーム系の細胞内蛋白輸送障害が存在する.(米国国立ヒトゲノム研究所ほかから研究助成を受けた.)