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August 22, 2013 Vol. 369 No. 8

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パプアニューギニアにおける殺虫剤処理した蚊帳とフィラリア症の伝播
Insecticidal Bed Nets and Filariasis Transmission in Papua New Guinea

L.J. Reimer and Others

背景

リンパ系フィラリア症を撲滅するための世界的取組みでは,ミクロフィラリアを媒介蚊に伝播しうるヒトの保有主を減らすことを目的とした,抗フィラリア薬の年 1 回の集団投与を基本としている.フィラリア症とマラリアの両方が流行している地域では,殺虫剤処理した蚊帳が広く用いられている.

方 法

抗フィラリア薬の年 1 回の集団投与を 5 回実施し,リンパ系フィラリア症の原因線虫の 1 つであるバンクロフト糸状虫(Wuchereria bancrofti)の伝播が減少した 5 つの村を対象とした.投与は 1998 年に終了していた.2009 年に長期持続性の殺虫剤で処理した蚊帳を配布し,配布前 26 ヵ月間と,配布後 11~36 ヵ月間にハマダラカ 21,899 匹を採取した.殺虫剤処理した蚊帳の導入の前後で,ハマダラカのフィラリア感染と,ハマダラカ体内の W. bancrofti の DNA の存在について検討した.人口動態モデルを用いて伝播阻止の確率を推定した.

結 果

村ごとのハマダラカによる刺咬頻度は,蚊帳の配布前は 6.4~61.3 回/人/日であったのが,配布後 11 ヵ月間は 1.1~9.4 回/人/日であった(P<0.001).同期間で,ハマダラカ体内に W. bancrofti が検出される割合は 1.8%から 0.4%に低下し(P=0.005),フィラリアの DNA が検出される割合は 19.4%から 14.9%に低下した(P=0.13).年間の潜在的伝播は,蚊帳配布前は感染性幼虫 5~325 匹/人/年であり,配布後は 0 匹/人/年であった.ミクロフィラリアの保有率が 2~38%であった 5 つの村すべてにおいて,伝播阻止の確率は,蚊帳配布前の 1.0%未満から,配布後 11 ヵ月間には 4.9~95%に上昇した.

結 論

殺虫剤処理した蚊帳による媒介虫の制御は,ハマダラカが W. bancrofti を伝播する地域では,その撲滅に有用な方法である.(米国公衆衛生局,米国国立衛生研究所から研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2013; 369 : 745 - 53. )