April 17, 2014 Vol. 370 No. 16
非心臓手術を受ける患者に対するクロニジン
Clonidine in Patients Undergoing Noncardiac Surgery
P.J. Devereaux and Others
非心臓手術では,術中・術後に交感神経系が著しく活性化する.中枢性の交感神経出力を鈍らせるクロニジンの低用量投与によって,血行動態を不安定にすることなく,周術期の心筋梗塞と死亡が予防される可能性がある.
非心臓手術を受ける,動脈硬化性疾患の患者またはそのリスクがある患者を対象として,低用量クロニジンとプラセボの比較,低用量アスピリンとプラセボの比較を個別に行うことのできる 2×2 要因デザインの盲検無作為化試験を行った.23 ヵ国 135 施設で計 10,010 例が登録された.クロニジンとプラセボの比較では,患者を手術直前にクロニジン投与(0.2 mg/日)またはプラセボ投与に無作為に割り付け,投与を術後 72 時間まで続けた.主要転帰は 30 日の時点での死亡と非致死的心筋梗塞の複合とした.
クロニジンによって,プラセボと比較して,主要転帰イベントの発生数は減少しなかった(それぞれ 367 例と 339 例,クロニジン群のハザード比 1.08,95%信頼区間 [CI] 0.93~1.26,P=0.29).心筋梗塞は,クロニジン群の 329 例(6.6%)とプラセボ群の 295 例(5.9%)に発生した(ハザード比 1.11,95% CI 0.95~1.30,P=0.18).臨床的に重要な低血圧が発生した患者は,クロニジン群のほうがプラセボ群よりも有意に多かった(2,385 例 [47.6%] 対 1,854 例 [37.1%],ハザード比 1.32,95% CI 1.24~1.40,P<0.001).クロニジンは,プラセボと比較して,非致死的心停止の発生率上昇に関連した(0.3% [16 例] 対 0.1% [5 例],ハザード比 3.20,95% CI 1.17~8.73,P=0.02).
非心臓手術を受ける患者に低用量クロニジンを投与しても,死亡と非致死的心筋梗塞から成る複合転帰の発生率は低下せず,その一方で,臨床的に重要な低血圧と非致死的心停止のリスクが上昇した.(カナダ保健研究機構ほかから研究助成を受けた.POISE-2 ClinicalTrials.gov 番号:NCT01082874)