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June 12, 2014 Vol. 370 No. 24

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ブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬イブルチニブに対する耐性の機序
Resistance Mechanisms for the Bruton's Tyrosine Kinase Inhibitor Ibrutinib

J.A. Woyach and Others

背景

イブルチニブ(ibrutinib)は,不可逆的なブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬であり,慢性リンパ性白血病(CLL)に有効である.不可逆的キナーゼ阻害薬に対する耐性や,BTK 阻害に関連した耐性の特徴は明らかにされていない.イブルチニブ治療中に再発する例はごく一部であるが,耐性の機序を理解することは重要である.われわれは,イブルチニブ耐性に関与する可能性のある変異を同定する目的で,再発患者を評価した.

方 法

イブルチニブ治療に対する耐性を獲得した 6 例からベースラインと再発時に採取した検体で,全エクソーム塩基配列決定を行った.続いて,同定した変異の機能解析を行った.さらに,長期にわたりリンパ球増多を認める 9 例の検体において,耐性変異を同定するため Ion Torrent 塩基配列決定を行った.

結 果

5 例において BTK のイブルチニブ結合部位にシステインからセリンへの変異を同定し,2 例において PLCγ2 に 3 つの異なる変異を同定した.機能解析から,BTK の C481S 変異により,イブルチニブによって可逆的にのみ阻害される蛋白となることが示された.PLCγ2 の R665W 変異と L845F 変異は,いずれも自律的な B 細胞受容体活性をもたらす機能獲得型変異である可能性がある.これらの変異は,イブルチニブを使用中の,長期にリンパ球増多を認める患者のいずれにも認められなかった.

結 論

不可逆的 BTK 阻害薬イブルチニブに対する耐性は,イブルチニブの結合が生じる部位のシステイン残基の変異が関与していることが多い.この所見は,BTK のすぐ下流の PLCγ2 にある別の 2 つの変異と合わせて,CLL におけるイブルチニブ作用機序では B 細胞受容体経路が重要であることを明確に示している.(米国国立がん研究所ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2014; 370 : 2286 - 94. )