The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み

日本語アブストラクト

October 9, 2014 Vol. 371 No. 15

Share

Share on Facebook
Facebookで共有する
Share on Twitter
Twitterでつぶやく
Share on Note
noteに投稿する

RSS

RSS

X 連鎖重症複合免疫不全症に対する改良型γ-レトロウイルスベクター
A Modified γ-Retrovirus Vector for X-Linked Severe Combined Immunodeficiency

S. Hacein-Bey-Abina and Others

背景

X 連鎖重症複合免疫不全症(SCID-X1)の患児を対象とした先行臨床試験では,インターロイキン-2 受容体γ鎖(γc)の相補的 DNA を発現するモロニーマウス白血病ウイルス由来γ-レトロウイルスベクターによって,ほとんどの症例は免疫の回復に成功しているが,症例の 25%はエンハンサーを介する変異誘発によって,ベクター誘発性白血病を引き起こした.SCID-X1 の治療法としての自己不活性化レトロウイルスの有効性と安全性を評価した.

方 法

欧州および米国での並行試験において,γc を発現するウイルスエンハンサー配列が欠失している自己不活性化(SIN)γ-レトロウイルスベクター(SIN-γc)による治療を評価する目的で,SCID-X1 を有する男児 9 例を登録した.

結 果

全例に,SIN-γc ベクターを導入した骨髄由来 CD34+細胞を前処置なしで移植した.12.1~38.7 ヵ月間の追跡後,9 例中 8 例が生存していた.1 例は,遺伝子組換え T 細胞の再構築前に,全身重症アデノウイルス感染により死亡した.残りの 8 例中 7 例は,機能性の末梢血 T 細胞が回復し,感染が消失した.これらの小児はその後も健康を維持した.CD3+T 細胞の回復動態について,先行試験で観察された結果との有意差は認められなかった.この試験の患児の末梢血における挿入部位を,先行試験の患者と比較評価したところ,今回の患児では,LMO2MECOM,その他のリンパ球の癌原遺伝子内における挿入部位のクラスタリングが有意に少ないことが示された.

結 論

この改良型γ-レトロウイルスベクターは,SCID-X1 の治療において有効性を示すことが明らかになった.この治療法の白血病発症に対する長期的影響はまだわかっていない.(米国国立衛生研究所ほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01410019,NCT01175239,NCT01129544)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2014; 371 : 1407 - 17. )