December 11, 2014 Vol. 371 No. 24
早期の常染色体優性多発性囊胞腎における血圧
Blood Pressure in Early Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease
R.W. Schrier and Others
常染色体優性多発性囊胞腎(ADPKD)患者には高血圧がよくみられ,総腎容積の増加,レニン–アンジオテンシン–アルドステロン系の活性化,腎疾患の進行に関連している.
二重盲検プラセボ対照試験において,高血圧を有する ADPKD 患者 558 例(15~49 歳,推算糸球体濾過量 [eGFR]>60 mL/分/1.73 m2 体表面積)を, 目標血圧標準値(収縮期血圧 120~130 mmHg,拡張期血圧 70~80 mmHg)群と,低値(収縮期血圧 95~110 mmHg,拡張期血圧 60~75 mmHg)群に無作為に割り付け,さらに,アンジオテンシン変換酵素阻害薬(リシノプリル)+アンジオテンシン受容体拮抗薬(テルミサルタン)群と,リシノプリル+プラセボ群に無作為に割り付けた.主要評価項目は総腎容積の年間変化率とした.
総腎容積の年間増加率は,低値群のほうが標準値群よりも有意に小さく(5.6% 対 6.6%,P=0.006),リシノプリル+テルミサルタン群とリシノプリル+プラセボ群とのあいだに有意差は認められなかった.eGFR の変化率は,2 つの薬剤群では同程度であったが,低値群を標準値群と比較すると,短期的には負の傾きの差があり(P<0.001),長期的には有意差境界の正の傾きの差が認められた(P=0.05).左室重量係数は,低値群のほうが標準値群よりも大きく低下した(-1.17 g/m2/年 対 -0.57 g/m2/年,P<0.001).尿中アルブミン排泄量は,低値群では 3.77%減少し,標準値群では 2.43%増加した(P<0.001).めまいとふらつきは,低値群のほうが標準値群よりも高頻度に認められた(80.7% 対 69.4%,P=0.002).
早期 ADPKD 患者に対しリシノプリルとテルミサルタンを併用しても,総腎容積の増加率に有意な変化は認められなかった.厳格な血圧コントロールは,標準的な血圧コントロールと比較して,総腎容積の増加がより緩やかであり,eGFR には全体的な変化はなく,左室重量係数の低下がより大きく,尿中アルブミン排泄量の減少がより大きいことに関連した.(米国国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所ほかから研究助成を受けた.HALT-PKD [Study A] 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT00283686)