March 19, 2015 Vol. 372 No. 12
脳マラリアの小児における脳腫脹と死亡
Brain Swelling and Death in Children with Cerebral Malaria
K.B. Seydel and Others
脳マラリアをきたしたアフリカの小児の致死率は依然として 15~25%である.主要な発症過程と死因は不明であるが,臨床的観察と病理所見を合わせると,脳容積の増加による頭蓋内圧の上昇が関与している可能性が示唆される.マラウイでは,2009 年に MRI が利用可能になったため,われわれは,MRI を用いて,アフリカの小児の致死的な脳マラリアの発症機序における,脳腫脹の役割を検討した.
脳マラリアの厳密な定義(網膜症を認めること等を含む)を満たした小児を登録し,詳細な臨床的特徴を明らかにし,MRI の撮影を入院時と,その後昏睡が持続しているあいだは 1 日 1 回行った.
脳マラリア(世界保健機関の定義による)で入院した 348 例のうち,168 例が選択基準を満たし,すべての検査を受け,解析対象とされた.死亡した 25 例(15%)のうち,21 例(84%)には入院時の MRI で重度の脳腫脹の所見が認められた.これとは対照的に,生存例 143 例のうち,MRI で重度の脳腫脹の所見が認められたのは 39 例(27%)であった.連続的に撮影した MRI から,生存例では当初認められた脳腫脹が減少していったことが確認された.
脳マラリアで死亡した小児では脳容積の増加が認められたが,死亡しなかった小児ではほとんど認められなかった.このことは,頭蓋内圧の上昇が致死的転帰をもたらす可能性があることを示唆している.生存例では,頭蓋内圧の上昇は一過性であることが自然経過から示された.(米国国立衛生研究所およびウェルカム・トラスト U.K. から研究助成を受けた.)