赤血球保存期間が心臓手術を受ける患者に及ぼす影響
Effects of Red-Cell Storage Duration on Patients Undergoing Cardiac Surgery
M.E. Steiner and Others
いくつかの観察研究によって,保存期間が 2~3 週間を超える赤血球の輸血は,致死的な例を含む重篤な有害事象に関連することが報告されている.心臓手術を受ける患者は,輸血の有害な影響をとくに受けやすい可能性がある.
2010~14 年に複数の施設で無作為化試験を行った.難易度の高い心臓手術が予定され,赤血球輸血を受ける可能性が高い 12 歳以上の患者を,術中・術後のすべての輸血について,保存期間 10 日以内の白血球除去赤血球を投与する群(短期保存群)と,保存期間 21 日以上の白血球除去赤血球を投与する群(長期保存群)に無作為に割り付けた.主要転帰は,多臓器機能障害スコア(MODS;0~24 のスコアで,高いほど臓器機能障害が重度であることを示す)の,術前スコアから,術後 7 日,死亡,退院のいずれかの時点での最高複合スコアへの変化とした.
赤血球輸血を受けた 1,098 例に投与された赤血球の保存期間中央値は,短期保存群が 7 日,長期保存群が 28 日であった.MODS の変化の平均は,それぞれ 8.5 ポイント上昇,8.7 ポイント上昇であった(差の 95%信頼区間 -0.6~0.3,P=0.44).7 日死亡率は短期保存群 2.8%,長期保存群 2.0%であり(P=0.43),28 日死亡率はそれぞれ 4.4%,5.3%であった(P=0.57).有害事象は,高ビリルビン血症の頻度が長期保存群でより高かったこと以外,群間で有意差は認められなかった.
赤血球保存期間と,MODS の変化における有意差とのあいだに関連は認められなかった.難易度の高い心臓手術を受ける 12 歳以上の患者において,保存期間 10 日以内の赤血球の輸血に,保存期間 21 日以上の赤血球の輸血に対する優越性は認められなかった.(米国国立心臓・肺・血液研究所から研究助成を受けた.RECESS 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT00991341)