介護施設入居者におけるホスピスケアの増加に伴うメディケアコストの変化
Changes in Medicare Costs with the Growth of Hospice Care in Nursing Homes
P. Gozalo and Others
介護施設入居者におけるホスピス利用が大幅に増加している.こうしたホスピス利用の増加により,終末期の支出が削減されているのかどうかは不明である.
2004~09 年におけるホスピスの拡大を自然実験として,この拡大に伴う最期の 1 年間におけるメディケア支出の変化を検討するために,difference-in-differences マッチド解析を行った.また,最期の 30 日間における集中治療室(ICU)の利用についても検討し,進行認知症患者については最期の 90 日間における経管栄養の実施および病院への入院についても評価した.2009 年にホスピスを利用するようになった人々はホスピスの拡大によるものとして,2004 年にはホスピスを利用していなかった人々は 2009 年に死亡していれば 2009 年にホスピスを利用していた可能性があるとみなしてマッチさせ,比較した.
介護施設入居者における死亡者 786,328 人のうち,2004 年にホスピスの利用を選択したのは 27.6%,2009 年にホスピスの利用を選択したのは 39.8%であった.2004 年と 2009 年のマッチさせたホスピスコホートと非ホスピスコホートは類似していた(平均年齢 85 歳,男性 35%,癌患者 25%).ホスピス利用の増加は,入院率の低下(2.4 パーセントポイントの低下),経管栄養実施率の低下(1.2 パーセントポイントの低下),および ICU 利用率の低下(7.1 パーセントポイントの低下)と有意に関連した.ホスピスの平均滞在期間は,2004 年の 72.1 日から,2009 年には 92.6 日へと増加した.2004~09 年で,ホスピスの拡大により,メディケア支出の平均 6,761 ドル(95%信頼区間 6,335~7,186)の純増加と関連し,増加したホスピスケアに対する支出(10,191 ドル)が,減少した入院およびその他のケアに対する支出(3,430 ドル)を上回っていたことを反映していた.
介護施設入居者に対するホスピスケアの増加は終末期における積極的ケアの減少と関連したが,メディケア支出の全体的な増加を伴った.(メディケア・メディケイドサービスセンターおよび米国国立老化研究所から研究助成を受けた.)