急性低酸素性呼吸不全における鼻カニューレによる高流量酸素療法
High-Flow Oxygen through Nasal Cannula in Acute Hypoxemic Respiratory Failure
J.-P. Frat and Others
急性低酸素性呼吸不全患者に対して,非侵襲的換気療法を行うべきかどうかが議論されている.鼻カニューレを用いた高流量酸素療法は,低酸素血症患者に対する既存の治療法に代わる可能性がある.
多施設共同非盲検試験において,高炭酸ガス血症を伴わない急性低酸素性呼吸不全で,動脈血酸素分圧/吸入酸素濃度が 300 mmHg 以下の患者を,高流量酸素療法群,マスクによる標準酸素療法群,非侵襲的陽圧換気療法群に無作為に割り付けた.主要評価項目は,28 日の時点での気管挿管率とした.副次的評価項目は,集中治療室入室中の全死因死亡率,90 日の時点での全死因死亡率,28 日の時点での人工呼吸器非装着日数とした.
310 例を解析の対象とした.気管挿管率(主要評価項目)は,高流量酸素療法群 38%(106 例中 40 例),標準酸素療法群 47%(94 例中 44 例),非侵襲的換気療法群 50%(110 例中 55 例)であった(全体の比較において P=0.18).28 日の時点での人工呼吸器非装着日数は高流量酸素療法群が有意に多かった(24±8 日に対し,標準酸素療法群 22±10 日,非侵襲的換気療法群 19±12 日;全体の比較において P=0.02).90 日死亡について,標準酸素療法群の高流量酸素療法群に対するハザード比は 2.01(95%信頼区間 [CI] 1.01~3.99)であり(P=0.046),非侵襲的換気療法群の高流量酸素療法群に対するハザード比は 2.50(95% CI 1.31~4.78)であった(P=0.006).
高炭酸ガス血症を伴わない急性低酸素性呼吸不全患者で高流量酸素療法,標準酸素療法,非侵襲的換気療法を比較した結果,気管挿管率に有意差は認められなかった.90 日死亡率には,高流量酸素療法を支持する有意差が認められた.(フランス保健省の地域間臨床研究病院プログラム 2010 から研究助成を受けた.FLORALI 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01320384)