2 型糖尿病の退役軍人 1,791 例を対象に強化血糖降下療法を標準療法と比較した退役軍人省糖尿病試験（VADT）では，主要心血管イベントの発生率は有意には低下しないことが示された．試験参加者に対して行われた延長追跡調査の結果を報告する．

臨床試験の終了後，中央のデータベースを用いて参加者を追跡し，処置，入院，死亡を明らかにした（完全コホート：参加者の 92.4%の追跡調査データが得られた）．多数の参加者が，年 1 回の調査と，定期的なカルテ調査によるさらなるデータ収集に同意した（調査コホート：77.7%の追跡調査データが得られた）．主要評価項目は，主要心血管イベント（心臓発作，脳卒中，うっ血性心不全の新規発症または悪化，虚血性壊疽による肢切断，心血管関連死）の初回発生までの期間とした．副次的評価項目は心血管死亡率，全死因死亡率とした．

強化療法群と標準療法群の糖化ヘモグロビン値の差は，試験中は平均 1.5 パーセントポイント（中央値 6.9% 対 8.4%）であったのが，試験終了後 3 年の時点では 0.2～0.3 パーセントポイントにまで減少した．追跡期間中央値 9.8 年において，強化療法群では，標準療法群と比較して，主要評価項目のリスクが有意に低く（ハザード比 0.83，95%信頼区間 [CI] 0.70～0.99，P＝0.04），主要心血管イベントの絶対リスク減少は 1,000 人年あたり 8.6 件であったが，心血管死亡率の低下は認められなかった（ハザード比 0.88，95% CI 0.64～1.20，P＝0.42）．全死亡率の低下も認められなかった（強化療法群のハザード比 1.05，95% CI 0.89～1.25，P＝0.54，追跡期間中央値 11.8 年）．

ほぼ 10 年にわたる追跡調査において，強化血糖コントロールに無作為に割り付けられ 5.6 年間の治療を受けた 2 型糖尿病患者では，標準療法に割り付けられた患者と比較して，主要心血管イベントが 1,000 人年あたり 8.6 件少なかったが，全生存率の改善は認められなかった．（米国退役軍人省共同研究プログラムほかから研究助成を受けた．VADT 試験：ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT00032487）