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October 8, 2015 Vol. 373 No. 15

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遠隔虚血プレコンディショニングと心臓手術の転帰
Remote Ischemic Preconditioning and Outcomes of Cardiac Surgery

D.J. Hausenloy and Others

背景

冠動脈バイパス術(CABG)を受ける患者において,遠隔虚血プレコンディショニング(上腕の一時的な虚血と再灌流を繰り返す)により,臨床転帰の改善が可能となるかは不明である.これについて検討する無作為化試験を行った.

方 法

血液心筋保護液を用いたオンポンプ CABG(弁手術の同時施行を問わず)を受ける予定の手術リスクが高い成人を対象に,偽処置を比較対照とする多施設共同試験を行った.麻酔導入後,切開前に,患者を遠隔虚血プレコンディショニング(上腕で標準的な血圧計カフの加圧・減圧を各 5 分間,4 回繰り返す群)と,偽処置(対照群)に無作為に割り付けた.麻酔管理,周術期ケアの標準化は行わなかった.複合主要評価項目は無作為化後 12 ヵ月の時点で評価した,心血管系の原因による死亡,非致死的心筋梗塞,冠血行再建,脳卒中とした.

結 果

英国の 30 ヵ所の心臓手術センターで 1,612 例(対照群 811 例,虚血プレコンディショニング群 801 例)を登録した.12 ヵ月の時点における主要評価項目の累積発生率に,遠隔虚血プレコンディショニング群と対照群とのあいだで有意差は認められなかった(それぞれ 212 例 [26.5%] と 225 例 [27.7%],虚血プレコンディショニング群のハザード比 0.95,95%信頼区間 0.79~1.15,P=0.58).さらに,副次的評価項目である周術期の心筋傷害(高感度血清トロポニン T アッセイでの 72 時間の時点の曲線下面積に基づき評価),強心作用スコア(術後 3 日間に投与された強心薬別の最大投与量から算出),急性腎障害,集中治療室入室期間・入院期間,6 分間歩行距離,QOL にも,有害事象にも,群間で有意差は認められなかった.

結 論

弁手術の同時施行を問わず,待期的オンポンプ CABG を受ける患者に遠隔虚血プレコンディショニングを行っても,臨床転帰は改善しなかった.(有効性・作用機序評価プログラム [英国医学研究評議会と英国国立衛生研究所の提携],英国心臓財団から研究助成を受けた.ERICCA 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01247545)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2015; 373 : 1408 - 17. )