乳癌に対する胸骨傍・内側鎖骨上照射
Internal Mammary and Medial Supraclavicular Irradiation in Breast Cancer
P.M. Poortmans and Others
早期乳癌女性の術後に行う全乳房照射または胸壁照射に胸骨傍・内側鎖骨上リンパ節照射(リンパ節領域照射)を追加した場合の生存への効果は,明らかにされていない.
腋窩リンパ節転移の有無を問わず原発巣が乳輪部または乳房内側に位置する女性と,原発巣が乳房外側に位置し腋窩リンパ節転移を認める女性を,全乳房照射または胸壁照射にリンパ節領域照射を追加して行う群(リンパ節照射群)と,全乳房照射または胸壁照射のみを行う群(対照群)に無作為に割り付けた.主要評価項目は全生存とした.副次的評価項目は,無病生存率,遠隔無病生存率,乳癌死亡率とした.
1996~2004 年に 4,004 例を無作為化した.大半(76.1%)が乳房温存手術を受けた.乳房切除後は,両群で 73.4%が胸壁照射を受けた.リンパ節転移陽性例のほぼ全例(99.0%)と,リンパ節転移陰性例の 66.3%が全身的補助療法を受けた.追跡期間中央値 10.9 年の時点で,811 例が死亡していた.10 年の時点で,全生存率はリンパ節照射群 82.3%,対照群 80.7%であった(リンパ節照射群の死亡のハザード比 0.87,95%信頼区間 [CI] 0.76~1.00,P=0.06).無病生存率はリンパ節照射群 72.1%,対照群 69.1%(病勢進行または死亡のハザード比 0.89,95% CI 0.80~1.00,P=0.04)であり,遠隔無病生存率はリンパ節照射群 78.0% 対 対照群 75.0%(ハザード比 0.86,95% CI 0.76~0.98,P=0.02),乳癌死亡率は 12.5% 対 14.4%(ハザード比 0.82,95% CI 0.70~0.97,P=0.02)であった.リンパ節領域照射による急性副作用はわずかであった.
早期乳癌患者において,リンパ節領域照射が全生存にもたらす効果はわずかであった.無病生存率と遠隔無病生存率は改善し,乳癌死亡率は低下した.(がん基金から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT00002851)