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August 27, 2015 Vol. 373 No. 9

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早期の無症候性 HIV 感染者に対する抗レトロウイルス療法の開始
Initiation of Antiretroviral Therapy in Early Asymptomatic HIV Infection

The INSIGHT START Study Group

背景

CD4 陽性細胞数が 350/mm3 を超えている無症候性のヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染者において,抗レトロウイルス療法を開始することの利益とリスクについては,無作為化試験のデータが不足している.

方 法

HIV 陽性で CD4 陽性細胞数が 500/mm3 を超えている成人を,抗レトロウイルス療法をすぐに開始する群(即時開始群)と,CD4 陽性細胞数が 350/mm3 に低下するまで,または後天性免疫不全症候群(AIDS)を発症するか,抗レトロウイルス療法を行わなければならない別の状況が発生するまで待機する群(待機開始群)に,無作為に割り付けた.主要エンドポイントは,AIDS に関連した重篤なイベント,AIDS に関連しない重篤なイベント,全死因死亡の複合とした.

結 果

4,685 例を平均 3.0 年間追跡した.試験登録時の HIV ウイルス量の中央値は 12,759 コピー/mL,CD4 陽性細胞数の中央値は 651/mm3 であった.2015 年 5 月 15 日,中間解析に基づき,データ安全性モニタリング委員会は研究課題の答えが出たと判断し,待機開始群の感染者に抗レトロウイルス療法を提案することを勧告した.主要エンドポイントが発生した感染者は,即時開始群では 42 例(1.8%,100 人年あたり 0.60 件)であったのに対し,待機開始群では 96 例(4.1%,100 人年あたり 1.38 件)であり,ハザード比は 0.43(95%信頼区間 [CI] 0.30~0.62,P<0.001)であった.AIDS に関連した重篤なイベントとAIDS に関連しない重篤なイベントのハザード比は,それぞれ 0.28(95% CI 0.15~0.50,P<0.001),0.61(95% CI 0.38~0.97,P=0.04)であった.発生した主要エンドポイントの 2/3 以上(68%)は,CD4 陽性細胞数が 500/mm3 を超えている感染者に発生した.グレード 4 のイベントのリスクは 2 群で同程度であり,予定外の入院のリスクも 2 群で同程度であった.

結 論

HIV 陽性で CD4 陽性細胞数が 500/mm3 を超えている成人で抗レトロウイルス療法を開始した場合,CD4 陽性細胞数が 350/mm3 に低下してから開始した場合と比較して,純利益が得られた.(米国国立アレルギー感染症研究所ほかから研究助成を受けた.START 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT00867048)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2015; 373 : 795 - 807. )