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May 26, 2016 Vol. 374 No. 21

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血友病 A におけるヒト化バイスペシフィック抗体の第 VIII 因子代替機能
Factor VIII–Mimetic Function of Humanized Bispecific Antibody in Hemophilia A

M. Shima and Others

背景

重症血友病 A 患者に対する標準治療には,第 VIII 因子を静脈内投与によって予防的に定期補充する方法と,出血時に投与する方法がある.しかし,これらはとくに小児患者には負担であり,また抗第 VIII 因子同種抗体(第 VIII 因子インヒビター)が発生する可能性がある.第 VIII 因子の補因子機能を代替するヒト化バイスペシフィック抗体エミシズマブ(emicizumab [ACE910])は,これらの問題を克服するために開発された.

方 法

エミシズマブの非盲検非無作為化個体間用量漸増試験に,18 例の重症血友病 A の日本人患者(第 VIII 因子インヒビター保有・非保有例)を登録した.患者にエミシズマブ 0.3,1.0,3.0 mg/kg 体重(それぞれコホート 1,2,3)を週 1 回,12 週間皮下投与した.評価項目は安全性と,薬物動態・薬力学プロファイルとした.登録前 6 ヵ月間と比較した年間出血率も探索的評価項目として追加した.年間出血率は出血回数に 365.25 を乗じ,投与期間の日数で除して求めた.

結 果

エミシズマブに起因する重篤な有害事象や臨床的に問題となる凝固異常は認められなかった.エミシズマブの血漿中濃度は用量依存的に上昇した.活性化部分トロンボプラスチン時間は試験期間中短縮が継続した.コホート 1,2,3 の年間出血率の中央値はそれぞれ 32.5 から 4.4,18.3 から 0.0,15.2 から 0.0 に低下した.第 VIII 因子インヒビターを保有する 11 例中 8 例(73%)と,保有しない7 例中 5 例(71%)において出血は認められなかった.出血をコントロールするための凝固因子製剤の出血ごとの使用量は減少した.エミシズマブに対する抗体は発生しなかった.

結 論

血友病 A 患者に対するエミシズマブの週 1 回皮下投与により,第 VIII 因子インヒビターの有無にかかわらず,出血率が顕著に低下した.(中外製薬株式会社から研究助成を受けた.JapicCTI 登録番号 121934)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2016; 374 : 2044 - 53. )