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January 21, 2016 Vol. 374 No. 3

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周産期心筋症と拡張型心筋症に共通する遺伝的素因
Shared Genetic Predisposition in Peripartum and Dilated Cardiomyopathies

J.S. Ware and Others

背景

周産期心筋症の臨床像は,特発性拡張型心筋症と一部共通している.特発性拡張型心筋症は,サルコメア蛋白タイチンをコードする TTN をはじめとする,40 を超える遺伝子の変異によって引き起こされる疾患である.

方 法

周産期心筋症女性患者 172 例において,拡張型心筋症との関連が示されている多様体を有する 43 遺伝子の塩基配列を決定した.これらの患者におけるタイプの異なる多様体(ナンセンス,フレームシフト,スプライシング)の保有率と,拡張型心筋症患者および対照集団におけるこれらの多様体の保有率とを比較した.

結 果

周産期心筋症女性患者において,8 遺伝子で,特異かつまれな短縮型多様体が 26 個同定された.短縮型多様体の保有率(172 例中 26 例 [15%])は,60,706 例の対照集団での保有率(4.7%)よりも有意に高かったが(P=1.3×10-7),拡張型心筋症患者コホートでの保有率(332 例中 55 例 [17%])とは同程度であった(P=0.81).同定された短縮型多様体の 2/3 は TTN に認められ,周産期心筋症患者での保有率は 10%,対照集団での保有率は 1.4%であった(P=2.7×10-10).ほぼすべての TTN 多様体は,タイチンの A 帯に位置していた.TTN 短縮型多様体のうち 7 個は,特発性拡張型心筋症患者ですでに報告されているものであった.周産期心筋症患者のうち,臨床的な特徴が十分に明らかにされている 83 例のサブグループでは,TTN 短縮型多様体の存在は,追跡 1 年の時点における駆出率がより低いことと有意に関連した(P=0.005).

結 論

周産期心筋症女性患者の大規模集団における短縮型多様体の分布は,特発性拡張型心筋症患者集団における分布と著しく類似していた.TTN 短縮型多様体は,それぞれの疾患で,もっとも多く認められた遺伝的素因であった.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2016; 374 : 233 - 41. )