February 11, 2016 Vol. 374 No. 6
後天性血栓性血小板減少性紫斑病に対するカプラシズマブ
Caplacizumab for Acquired Thrombotic Thrombocytopenic Purpura
F. Peyvandi and Others
後天性血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は,血小板が超巨大 von Willebrand 因子重合体に凝集することで引き起こされる.この細小血管血栓症は,生命に関わる可能性のある合併症を伴う多臓器虚血を引き起こす.連日の血漿交換と免疫抑制療法により寛解導入が可能であるが,微小血栓に起因する死亡と合併症の発生率は依然として高い.
抗 von Willebrand 因子ヒト化単一可変領域免疫グロブリン(Nanobody)であるカプラシズマブ(caplacizumab)は,超巨大 von Willebrand 因子重合体と血小板の相互作用を阻害する.第 2 相比較試験において,後天性 TTP 患者を,血漿交換療法中とその後 30 日間,カプラシズマブ(10 mg/日)を皮下投与する群とプラセボを投与する群に無作為に割り付けた.主要評価項目は奏効までの期間とし,血小板数の正常化が確認されることと定義した.主な副次的評価項目は,増悪,再発などとした.
75 例を無作為化した(カプラシズマブ群 36 例,プラセボ群 39 例).奏効までの期間は,カプラシズマブ群のほうがプラセボ群よりも有意に短縮した(期間中央値が 39%短縮,P=0.005).増悪をきたした患者は,カプラシズマブ群では 3 例であったのに対し,プラセボ群では 11 例であった.カプラシズマブ群の 8 例が試験薬中止後 1 ヵ月以内に再発をきたし,うち 7 例では ADAMTS13 活性が依然として 10%未満であったことから,自己免疫活性が消失していないことが示唆された.出血に関連した有害事象は大半が軽度から中等度であり,カプラシズマブ群のほうがプラセボ群よりも頻度が高かった(患者の 54% 対 38%).その他の有害事象の頻度は 2 群で同程度であった.プラセボ群では 2 例が死亡したのに対し,カプラシズマブ群では死亡例はなかった.
カプラシズマブによって,プラセボ群との比較で急性 TTP の速やかな消失が得られた.カプラシズマブの血小板保護効果は,治療期間を通して維持された.カプラシズマブは,プラセボと比較して出血傾向の増大に関連した.(Ablynx 社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01151423)