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February 11, 2016 Vol. 374 No. 6

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フラミンガム心臓研究における 30 年間での認知症発症率
Incidence of Dementia over Three Decades in the Framingham Heart Study

C.L. Satizabal and Others

背景

認知症の有病率は,平均余命が延長するにつれて上昇すると予測されている.しかし,最近の推計では,高所得国では認知症の年齢別発症率が低下していることが示唆されている.経時的傾向は,1 つの集団を,一貫した診断基準を用いて長期間継続的に観察することでもっともよく導き出される.フラミンガム心臓研究参加者における,認知症発症率の 30 年間の経時的傾向を報告する.

方 法

1975 年以降,フラミンガム心臓研究参加者に,認知症発症に関するサーベイランスを行った.60 歳以上の 5,205 人を解析対象とし,年齢と性別で補正した Cox 比例ハザードモデルを用いて,4 つの年代区分それぞれにおける認知症の 5 年発症率を明らかにした.また,年代と,年齢,性別,アポリポ蛋白 Eε4 状態,教育レベルとの相互作用も探索し,それらの相互作用,ならびに血管危険因子と心血管疾患が,経時的傾向に及ぼす影響を検討した.

結 果

年齢と性別で補正後の認知症の 5 年累積ハザード率は,第 1 期(1970 年代後半~1980 年代前半)では 100 人あたり 3.6,第 2 期(1980 年代後半~1990 年代前半)では 100 人あたり 2.8,第 3 期(1990 年代後半~2000年代前半)では 100 人あたり 2.2,第 4 期(2000 年代後半~2010 年代前半)では 100 人あたり 2.0 であった.第 1 期の発症率と比較して,第 2 期は 22%,第 3 期は 38%,第 4 期は 44%低下した.このリスク低下は,学歴が高校卒業以上の参加者に限って認められた(ハザード比 0.77,95%信頼区間 0.67~0.88).大部分の血管危険因子(肥満と糖尿病を除く)の有病率と,脳卒中,心房細動,心不全に関連する認知症のリスクは経時的に低下したが,これらの傾向のいずれによっても,認知症発症率の低下は完全には説明されない.

結 論

フラミンガム心臓研究参加者において,認知症発症率は 30 年間で低下した.この低下に寄与する因子は,完全には同定されていない.(米国国立衛生研究所から研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2016; 374 : 523 - 32. )