March 10, 2016 Vol. 374 No. 10
マラリアに感染したアフリカの妊娠女性に対する 4 種類のアーテミシニンベースの治療
Four Artemisinin-Based Treatments in African Pregnant Women with Malaria
The PREGACT Study Group
妊娠女性のマラリアに対するアーテミシニン(artemisinin)併用療法の安全性と有効性に関する情報は限られており,とくにサハラ以南のアフリカにおける情報は少ない.
アフリカの 4 ヵ国で,妊娠女性のマラリア治療に関する多施設共同無作為化非盲検試験を行った.妊娠第 2 期または第 3 期の,熱帯熱マラリアに感染した女性(原虫密度,症状の有無を問わない)3,428 例に対し,アーテメター/ルメファントリン,アモジアキン(amodiaquine)/アーテスネート,メフロキン/アーテスネート,ジヒドロアーテミシニン(dihydroartemisinin)/ピペラキン(piperaquine)のいずれかを投与した.主要評価項目は,63 日の時点でのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の結果で補正した治癒率(すなわち最初の感染の治癒;追跡期間中の原虫への新たな感染は治療失敗とみなさず)と,安全性転帰とした.
per-protocol 解析における PCR 補正後の治癒率は,アーテメター/ルメファントリン群 94.8%,アモジアキン/アーテスネート群 98.5%,ジヒドロアーテミシニン/ピペラキン群 99.2%,メフロキン/アーテスネート群 96.8%であった.intention-to-treat 解析における PCR 補正後の治癒率は,それぞれ 94.2%,96.9%,98.0%,95.5%であった.アモジアキン/アーテスネート群,ジヒドロアーテミシニン/ピペラキン群,メフロキン/アーテスネート群の 3 群間に有意差は認められなかった.アーテメター/ルメファントリン群の治癒率は,他の 3 群よりも有意に低かったが,絶対差は同等性マージンの 5 パーセントポイント以内であった.治療後の予防効果の指標として用いた未補正の治癒率は,アーテメター/ルメファントリン群(52.5%)が,アモジアキン/アーテスネート群(82.3%),ジヒドロアーテミシニン/ピペラキン群(86.9%),メフロキン/アーテスネート群(73.8%)よりも有意に低かった.重篤な有害事象の発現率と出生転帰に群間で有意差は認められなかった.無力症,食欲不振,めまい,悪心,嘔吐などの薬剤関連有害事象の発現頻度は,メフロキン/アーテスネート群(50.6%)とアモジアキン/アーテスネート群(48.5%)が,ジヒドロアーテミシニン/ピペラキン群(20.6%),アーテメター/ルメファントリン群(11.5%)よりも有意に高かった(4 群間の比較について P<0.001).
アーテメター/ルメファントリンは,有害作用がもっとも少なく,十分な治癒率をもたらしたが,治療後の予防効果の持続はもっとも短く,一方,ジヒドロアーテミシニン/ピペラキンは有効性がもっとも高く,安全性プロファイルは忍容しうるものであった.(欧州・発展途上国臨床試験パートナーシップほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT00852423)