早期乳癌に対するネラチニブの適応的無作為化
Adaptive Randomization of Neratinib in Early Breast Cancer
J.W. Park and Others
乳癌は,その不均一性から,有効な治療をみつけるのが困難になっている.ステージ II または III の高リスク乳癌に対する術前補助化学療法を検討するための多施設共同適応的第 2 相試験である I-SPY 2 試験では,標準化学療法に複数の新薬を併用し,病理学的完全奏効率(すなわち手術の時点で乳房またはリンパ節に残存腫瘍を認めない患者の割合)への効果を評価した.
適応的無作為化デザインを用いて,標準術前補助化学療法とチロシンキナーゼ阻害薬ネラチニブ(neratinib)の併用を,対照と比較した.適格例を,ヒト上皮増殖因子受容体 2(HER2)の状態,ホルモン受容体の状態,70 遺伝子の発現プロファイルによるリスクに基づき,8 つのバイオマーカーサブタイプに分類した.10 種類のバイオマーカー特性(あらかじめ定義したサブタイプの組合せ)に関して,ネラチニブを対照と比較評価した.主要評価項目は病理学的完全奏効とした.経時的な MRI 上の腫瘍体積の変化をもとに,各患者で腫瘍体積縮小が得られる可能性を評価した.各腫瘍サブタイプ内での実験群への適応的割付けは,対照に対してネラチニブ治療の優越性を示すベイズ確率に基づいて行った.事前に規定した有効性の閾値は,確認目的の第 3 相試験で予測される成功のベイズ確率が 85%とし,1 つ以上のバイオマーカー特性のもとでこの閾値に達した治療法は,組入れを中止した(試験からの「卒業」).すべてのバイオマーカー特性のもとで確率が 10%を下回った治療法は,無益性により組入れを中止した.
ネラチニブは,HER2 陽性ホルモン受容体陰性の場合,事前に規定した有効性の閾値に達した.HER2 陽性ホルモン受容体陰性乳癌の患者の推定病理学的完全奏効率の平均は,ネラチニブ群の 115 例では 56%(95%ベイズ確率区間 [PI] 37~73%)であったのに対し,対照群の 78 例では 33%(95% PI 11~54%)であった.第 3 相試験における成功の最終予測確率は 79%であった.
HER2 陽性ホルモン受容体陰性乳癌の患者では,標準療法にネラチニブを併用することで,トラスツズマブを併用した場合と比較して病理学的完全奏効率が高くなる確率が高かった.(QuantumLeap Healthcare Collaborative ほかから研究助成を受けた.I-SPY 2 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01042379)