September 22, 2016 Vol. 375 No. 12
外傷による頭蓋内圧亢進に対する減圧開頭術の試験
Trial of Decompressive Craniectomy for Traumatic Intracranial Hypertension
P.J. Hutchinson and Others
外傷により治療抵抗性の頭蓋内圧亢進を認める患者に対して行う減圧開頭術が臨床転帰にもたらす効果は明らかにされていない.
2004~14 年に,外傷性脳損傷で治療抵抗性の頭蓋内圧亢進を認める 10~65 歳の患者 408 例を,減圧開頭術を施行する群と,薬物療法を継続する群とに無作為に割り付けた.主要転帰は,6 ヵ月の時点での拡張グラスゴー転帰尺度(GOS-E)(死亡から「上位の良好な回復」[損傷に関連する障害がない] を,8 ポイントの尺度で表す)での評価とした.主要転帰指標を,順序尺度に基づく比例オッズモデルで分析した.モデルが棄却された場合,GOS-E の分布に有意差が存在することになるため,結果は記述的に報告することとした.
GOS-E の分布に群間で有意差が認められた(P<0.001).比例オッズの仮定が棄却されたため,結果を記述的に報告する.6 ヵ月の時点での GOS-E の分布は,死亡は手術群 201 例中 26.9%に対し薬物療法群 188 例中 48.9%,植物状態は 8.5%に対し 2.1%,下位の重度障害(ケアを他者に依存)は 21.9%に対し 14.4%,上位の重度障害(在宅で自立)は 15.4%に対し 8.0%,中等度の障害は 23.4%に対し 19.7%,良好な回復は 4.0%に対し 6.9%であった.12 ヵ月の時点での GOS-E 分布は,死亡は手術群 194 例中 30.4%に対し薬物療法群 179 例中 52.0%,植物状態は 6.2%に対し 1.7%,下位の重度障害は 18.0%に対し 14.0%,上位の重度障害は 13.4%に対し 3.9%,中等度の障害は 22.2%に対し 20.1%,良好な回復は 9.8%に対し 8.4%であった.手術患者は薬物療法患者より,無作為化後に頭蓋内圧が 25 mmHg を超えている時間が短かったが(中央値 5.0 時間 対 17.0 時間,P<0.001),有害事象の発現率が高かった(16.3% 対 9.2%,P=0.03).
外傷性脳損傷で治療抵抗性の頭蓋内圧亢進を認める患者に減圧開頭術を行うと,薬物療法と比較して,6 ヵ月の時点での死亡率は低いが,植物状態と下位・上位の重度障害の発生率は高かった.中等度の障害と良好な回復の発生率は両群で同程度であった.(英国医学研究評議会ほかから研究助成を受けた.RESCUEicp 試験:Current Controlled Trials 登録番号 ISRCTN66202560)