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November 3, 2016 Vol. 375 No. 18

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脂肪酸アミド加水分解酵素阻害薬による急性神経障害
Acute Neurologic Disorder from an Inhibitor of Fatty Acid Amide Hydrolase

A. Kerbrat and Others

背景

脂肪酸アミド加水分解酵素(FAAH)活性が低下すると,カンナビノイドの内因性類似物質,すなわち内因性カンナビノイドの量が増加する.FAAH 阻害薬は,動物モデルで鎮痛作用および抗炎症作用を示し,一部は第 1 相試験,第 2 相試験で検討されている.第 1 相試験にて,可逆的経口 FAAH 阻害薬 BIA 10-2474 を健常ボランティアに投与し,安全性を評価した.

方 法

BIA 10-2474 の単回投与(0.25~100 mg)と,反復投与(2.5~20 mg を 10 日間)を行う連続コホートを設定し,健常ボランティア計 84 例に投与した.重度の有害事象は報告されなかった.続いて,別のコホートの参加者を,プラセボ(2 例)と,BIA 10-2474 の 50 mg/日(6 例)に割り付けた.本稿では,この最終コホートの参加者における神経系有害事象を中心に報告する.実薬投与を受けた 6 例のうち 4 例から,今回の報告で臨床データと放射線画像データを公表することに同意が得られた.

結 果

投与開始 5 日目より,4 例のうち 3 例に急性・急速進行性の中枢神経系障害が発現した.主な臨床像は,頭痛,小脳症候群,記憶障害,意識障害であった.MRI により,主に橋と海馬に,微小出血や,脳髄液信号抑制反転回復(FLAIR)画像と拡散強調画像のシーケンスで示される高信号域など,両側対称性の脳病変が認められた.1 例は脳死状態となり,2 例はのちに症状が改善したものの,1 例には記憶障害が残存し,もう 1 例には小脳症候群が残存した.1 例は無症候のままであった.

結 論

BIA 10-2474 を第 1 相試験における最大累積投与量で経口投与された例で,予期せぬ重度の神経障害が発現した.この有害な脳症候群の発症機序は不明である.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2016; 375 : 1717 - 25. )