December 29, 2016 Vol. 375 No. 26
神経線維腫症 1 型に関連する叢状神経線維腫におけるセルメチニブの活性
Activity of Selumetinib in Neurofibromatosis Type 1–Related Plexiform Neurofibromas
E. Dombi and Others
神経線維腫症 1 型に関連する叢状神経線維腫は,RAS–マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)シグナル伝達の活性化を特徴とする疾患であるが,有効な薬物療法がない.
神経線維腫症 1 型および手術不能な叢状神経線維腫を有する小児を対象に,MAPK キナーゼ(MEK)1 および 2 の選択的経口阻害薬であるセルメチニブ(selumetinib)(AZD6244 または ARRY-142886)の最大耐用量を決定し,血漿中薬物動態を評価する目的で,第 1 相試験を行った.セルメチニブは,継続投薬スケジュール(28 日サイクル)で,20~30 mg/m2 を 1 日 2 回投与した.また,神経線維腫症 1 型に関連する神経線維腫のモデルマウスでセルメチニブを評価した.治療に対する反応(すなわち,叢状神経線維腫の容積のベースラインからの増加または減少)を観察するため,MRI 解析により叢状神経線維腫の容積の変化を測定した.
腫瘍容積の中央値が 1,205 mL(範囲 29~8,744)の小児 24 例(年齢中央値 10.9 歳,範囲 3.0~18.5)にセルメチニブを投与した.長期にわたる投与が可能であったため,サイクル数の中央値は 30(範囲 6~56)であった.最大耐用量は,25 mg/m2(推奨成人用量の約 60%)であった.セルメチニブに関連する頻度の高い毒性は,ざ瘡様皮疹,胃腸症状,無症候性のクレアチンキナーゼ上昇などであった.この試験の小児におけるセルメチニブの薬物動態の評価の結果は,成人で報告されている結果と同様であった.セルメチニブ投与により,24 例中 17 例(71%)で部分奏効(腫瘍容積のベースラインからの減少が≧20%)が得られ,マウス 18 匹中 12 匹(67%)で神経線維腫容積がベースラインから減少した.疾患進行(腫瘍容積のベースラインからの増加が≧20%)は,現時点までに認められていない.腫瘍に関連する疼痛,変形,機能障害が減少するという事例的エビデンスが観察された.
この初期試験データから,神経線維腫症 1 型および手術不能な叢状神経線維腫を有する小児は,用量調整を行う長期のセルメチニブ投与により,毒性が増加することなく利益を得ることが示唆された.( 米国国立衛生研究所ほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01362803)