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July 28, 2016 Vol. 375 No. 4

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2 型糖尿病におけるエンパグリフロジンと腎疾患の進行
Empagliflozin and Progression of Kidney Disease in Type 2 Diabetes

C. Wanner and Others

背景

糖尿病は,心臓・腎臓の有害イベントのリスクを増大させる.EMPA-REG OUTCOME 試験では,ナトリウム–グルコース共輸送体 2 阻害薬エンパグリフロジンにより,心血管リスクが高い 2 型糖尿病患者における主要有害心血管イベントのリスクが減少した.エンパグリフロジンの腎臓に対する長期効果を明らかにするため,同試験で事前に規定した副次的転帰の一つである細小血管症に関する解析を行った.

方 法

2 型糖尿病で,推算糸球体濾過量が 30 mL/分/1.73 m2 体表面積以上の患者を,1 日 1 回エンパグリフロジン(10 mg または 25 mg)を投与する群とプラセボを投与する群に無作為に割り付けた.事前に規定した腎転帰は,腎症の発症または悪化(顕性アルブミン尿症への進行,血清クレアチニンの倍増,腎代替療法の開始,または腎疾患による死亡),アルブミン尿症の発症などであった.

結 果

腎症の発症または悪化は,エンパグリフロジン群では 4,124 例中 525 例(12.7%),プラセボ群では 2,061 例中 388 例(18.8%)に認められた(エンパグリフロジン群のハザード比 0.61,95%信頼区間 0.53~0.70,P<0.001).血清クレアチニンの倍増は,エンパグリフロジン群では 4,645 例中 70 例(1.5%),プラセボ群では 2,323 例中 60 例(2.6%)に認められ,相対リスク減少率は 44%と有意であった.腎代替療法は,エンパグリフロジン群では 4,687 例中 13 例(0.3%),プラセボ群では 2,333 例中 14 例(0.6%)で開始され,相対リスク減少率は 55%であった.アルブミン尿症の発症率に群間で有意差は認められなかった.ベースラインで腎機能障害を認めた患者におけるエンパグリフロジンの有害事象プロファイルは,試験集団全体で報告されたものと類似していた.

結 論

2 型糖尿病で心血管リスクが高い患者では,標準治療にエンパグリフロジンを追加した場合,プラセボを追加した場合と比較して,腎疾患の進行が遅く,臨床的に重要な腎イベントの発生率が低かった.(Boehringer Ingelheim 社と Eli Lilly 社の糖尿病領域アライアンスから研究助成を受けた.EMPA-REG OUTCOME 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01131676)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2016; 375 : 323 - 34. )