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April 13, 2017 Vol. 376 No. 15

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米国における大規模マラソン大会中の救急医療の遅延と死亡率
Delays in Emergency Care and Mortality during Major U.S. Marathons

A.B. Jena and Others

背景

大規模なマラソン大会は,広範囲にわたって道路が閉鎖され,インフラが障害されることが多く,マラソンルートの近隣に住むマラソンに参加していない急病患者に対する救急医療の遅延を招く可能性がある.

方 法

2002~12 年に大規模なマラソン大会を開催した米国 11 都市のメディケア受給者(65 歳以上)における,急性心筋梗塞または心停止による入院に関する医療データを解析し,大会当日に入院した受給者,大会の 5 週間前の同じ曜日に入院した受給者,5 週間後の同じ曜日に入院した受給者,大会当日に入院したがマラソンの影響を受けない周辺の郵便番号地域に住む受給者のあいだで 30 日死亡率を比較した.また,全米の救急車搬送登録データを解析し,マラソンの影響を受けるエリアで午前中(道路が閉鎖されていた可能性のある時間帯)に発生した救急搬送の,現場から病院までの搬送時間が当日以外と比較して長いかどうかを調査した.さらに,同じエリアで夜間(道路閉鎖が解除されている時間帯)に発生した救急搬送と,マラソンの影響を受けないエリアで発生した救急搬送についても,大会当日と当日以外とで搬送時間を比較した.

結 果

1 日の入院件数は大会当日も当日以外も同程度であった(1 都市あたりの平均入院件数はそれぞれ 10.6 件と 10.5 件,P=0.71).患者背景も,大会当日に入院した受給者と当日以外に入院した受給者とで類似していた.マラソンの影響を受けるエリアにおける未調整 30 日死亡率は,大会当日は 28.2%(入院 1,145 例のうち死亡 323 例)であったのに対し,当日以外は 24.9%(入院 11,074 例のうち死亡 2,757 例)であった(絶対リスク差 3.3 パーセントポイント,95%信頼区間 0.7~6.0,P=0.01,相対リスク差 13.3%).共変量で調整後も,5 つ以上の慢性疾患を有する受給者(マラソン参加が原因で入院した可能性の低い集団)を対象とした解析でも,同様のパターンが認められた.搬送された病院や,搬送先で受けた治療に有意差は認められなかった.午前中の搬送について,現場から病院までの搬送時間は,大会当日は当日以外よりも 4.4 分長かった(相対差 32.1%,P=0.005).夜間の搬送と,マラソンの影響を受けないエリアでの搬送に遅延は認められなかった.

結 論

マラソン大会の影響を受けるエリアの病院に大会当日に急性心筋梗塞または心停止で入院したメディケア受給者は,当日以外に入院した受給者と比較して,午前中の場合は救急搬送時間が長く(4.4 分の差),30 日死亡率が高かった.(米国国立衛生研究所から研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2017; 376 : 1441 - 50. )