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April 27, 2017 Vol. 376 No. 17

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高トリグリセリド血症の一因としての抗 GPIHBP1 自己抗体
Autoantibodies against GPIHBP1 as a Cause of Hypertriglyceridemia

A.P. Beigneux and Others

背景

毛細血管内皮細胞で発現する GPIHBP1(グリコシルホスファチジルイノシトールアンカー高比重リポ蛋白結合蛋白 1)と呼ばれる蛋白は,リポ蛋白リパーゼと結合し,それを毛細血管腔内の作用部位まで往復して運ぶ.GPIHBP1 が欠失すると,リポ蛋白リパーゼが毛細血管腔に到達するのが妨げられる.GPIHBP1 欠失患者は,血漿リポ蛋白リパーゼ値が低く,トリグリセリドの血管内での加水分解が障害され,重度の高トリグリセリド血症(高カイロミクロン血症)をきたす.GPIHBP1 についてモノクローナル抗体ベースの免疫測定法で特性を明らかにするなかで,われわれは,GPIHBP1 の測定を不可能にする干渉物質を含有する 2 つの血漿検体(いずれも高カイロミクロン血症患者のもの)に遭遇した.この発見から,これらの 2 つの検体が抗 GPIHBP1 自己抗体を含有する可能性が浮上した.

方 法

免疫測定法,ウエスタンブロット法,免疫細胞化学的手法を組み合わせて 2 つの血漿検体(および他の高カイロミクロン血症患者の検体)を検査し,抗 GPIHBP1 自己抗体が存在するかどうかを検討した.また,抗 GPIHBP1 自己抗体が,リポ蛋白リパーゼと GPIHBP1 の結合を阻害することができるかどうかも検討した.

結 果

高カイロミクロン血症患者 6 例で抗 GPIHBP1 自己抗体を同定し,それらの自己抗体によってリポ蛋白リパーゼと GPIHBP1 の結合が阻害されることがわかった.GPIHBP1 欠失患者と同様に,抗 GPIHBP1 自己抗体を有する患者も血漿リポ蛋白リパーゼ値が低かった.6 例のうち 3 例が全身性エリテマトーデスであった.抗 GPIHBP1 自己抗体を有する患者のうち 1 例が出産し,その児の血漿中には母親由来の抗 GPIHBP1 自己抗体が認められた.その児は,重度であるが一過性の高カイロミクロン血症を呈した.抗 GPIHBP1 自己抗体を有する高カイロミクロン血症患者のうち 2 例で,免疫抑制薬による治療効果が認められた.

結 論

高カイロミクロン血症患者 6 例では,GPIHBP1 のリポ蛋白リパーゼと結合して輸送する能力を抗 GPIHBP1 自己抗体が阻害しており,それがリポ蛋白リパーゼを介するトリグリセリドが豊富なリポ蛋白のプロセシングに干渉し,重度の高トリグリセリド血症を引き起こしていた.(米国国立心臓・肺・血液研究所,ルデュック財団から研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2017; 376 : 1647 - 58. )