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May 11, 2017 Vol. 376 No. 19

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癌を伴わない子宮内膜症における癌関連遺伝子変異
Cancer-Associated Mutations in Endometriosis without Cancer

M.S. Anglesio and Others

背景

子宮内膜症は,子宮内膜の間質細胞と上皮細胞が異所性に存在することと定義され,生殖年齢の女性の約 10%が発症し,骨盤痛と不妊を引き起こす可能性がある.子宮内膜症病変は良性の炎症性病変と考えられているが,局所浸潤やアポトーシス耐性など,癌と類似の特徴をもつ.

方 法

27 例の高度に浸潤した子宮内膜症病変を,全エクソーム解析(24 例)または癌ドライバー標的解析(3 例)により解析した.上皮細胞,間質細胞をマイクロダイセクションし,デジタルゲノム法を用いて変異の妥当性を確認した.別の 12 例の上皮細胞,間質細胞で,ドロップレットデジタルポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)により高頻度の活性化 KRAS 変異を検索した.

結 果

エクソーム解析により 24 例中 19 例(79%)に体細胞変異を認めた.5 例が,ARID1APIK3CAKRASPPP2R1A に既知の癌ドライバー変異を有していた.ドライバー変異の妥当性は,セーフシークエンシングシステムまたは免疫組織化学的解析にて確認した.患者選択を行っていない状況で,この割合でドライバー遺伝子が変異している確率は P=0.001 と推定された(二項検定).標的解析とドロップレットデジタル PCR により,それぞれ 3 例中 2 例,12 例中 3 例に KRAS 変異を認めた.変異は上皮細胞で認められ,間質細胞では認められなかった.1 例が c.35G→Tと c.35G→C という 2 つの異なる KRAS 変異を有しており,別の 1 例では 3 つの異なる病変で同一の KRAS 変異 c.35G→A が認められた.

結 論

高度に浸潤した子宮内膜症病変は,実質的には悪性転化のリスクはないとされているが,癌ドライバー遺伝子に体細胞変異が認められた.ドライバー変異は高度浸潤病変 39 個中 10 個(26%)で認められ,検証した体細胞変異のすべてが子宮内膜症病変の上皮細胞部に限定されていると考えられた.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2017; 376 : 1835 - 48. )