急性心不全におけるウラリチドの心血管系死亡率に対する影響
Effect of Ularitide on Cardiovascular Mortality in Acute Heart Failure
M. Packer and Others
急性心不全患者では,心筋壁応力を下げ,可能性のある心筋障害を抑えることで,よりよい長期予後を得ることを治療目標とし,血管拡張薬の静脈内投与による早期介入が提案されている.
二重盲検試験で,急性心不全患者 2,157 例を,認められている治療に加えて,ウラリチド(ularitide)15 ng/kg/分を 48 時間持続点滴静注する群と,マッチさせたプラセボを投与する群に無作為に割り付けた.投与は初回臨床評価から中央値 6 時間後に開始された.主要転帰は,追跡期間中央値 15 ヵ月間の心血管系の原因による死亡と,最初の 48 時間の臨床経過を評価する階層的複合エンドポイントの 2 項目とした.
心血管系の原因による死亡は,ウラリチド群の 236 例とプラセボ群の 225 例に発生した(21.7% 対 21.0%,ハザード比 1.03,96%信頼区間 0.85~1.25,P=0.75).intention-to-treat 解析では,階層的複合エンドポイントに群間で有意差は認められなかった.ウラリチド群は,プラセボ群と比較して,収縮期血圧と脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体 N 端フラグメント値の低下が大きかった.しかし,静注中の心筋トロポニン T 値の変化は,ベースラインと 48 時間後のデータがある 55%の患者において,群間で差は認められなかった.
急性心不全患者において,ウラリチドは良好な生理学的効果(心筋トロポニン値への影響はなし)を示したが,短期投与では臨床複合エンドポイントへの影響はなく,長期心血管系死亡率も低下しなかった.(Cardiorentis 社から研究助成を受けた.TRUE-AHF 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01661634)