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January 19, 2017 Vol. 376 No. 3

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一次進行型多発性硬化症におけるオクレリズマブとプラセボとの比較
Ocrelizumab versus Placebo in Primary Progressive Multiple Sclerosis

X. Montalban and Others

背景

多発性硬化症の免疫学的発症機序の解明が進み,B 細胞の除去が治療に有効である可能性が示唆されている.われわれは,CD20 陽性 B 細胞を選択的に除去するヒト化モノクローナル抗体であるオクレリズマブ(ocrelizumab)を,一次進行型多発性硬化症患者を対象に検討した.

方 法

第 3 相試験で,一次進行型多発性硬化症患者 732 例を,オクレリズマブ(600 mg)を静注する群とプラセボを投与する群に 2:1 の割合で無作為に割り付け,24 週ごとに少なくとも 120 週,かつ障害進行イベントが事前に規定した件数発生するまで投与した.主要評価項目は,生存時間解析で 12 週の時点で障害進行が確認されている患者の割合とした.

結 果

12 週の時点で障害進行が確認されている患者の割合は,オクレリズマブ群 32.9%に対し,プラセボ群 39.3%であった(ハザード比 0.76,95%信頼区間 [CI] 0.59~0.98,P=0.03).24 週の時点で障害進行が確認されている患者の割合は,オクレリズマブ群 29.6%に対し,プラセボ群 35.7%であった(ハザード比 0.75,95% CI 0.58~0.98,P=0.04).120 週までに,25 フィート歩行計時試験の成績はオクレリズマブ群で 38.9%低下したのに対し,プラセボ群では 55.1%低下した(P=0.04).T2 強調 MRI 上の脳病変の総体積は,オクレリズマブ群では 3.4%減少したが,プラセボ群では 7.4%増加し(P<0.001),また脳体積減少の割合は,オクレリズマブ群 0.90%に対し,プラセボ群 1.09%であった(P=0.02).SF-36 健康調査の身体的健康度サマリースコアの変化量に有意差は認められなかった.オクレリズマブ群では,投与時反応,上気道感染症,口腔ヘルペス感染症がプラセボ群よりも多くみられた.腫瘍は,オクレリズマブ投与例の 2.3%とプラセボ投与例の 0.8%で発生した.重篤な有害事象,および重篤な感染症の発生率に群間で臨床的に有意な差は認められなかった.

結 論

一次進行型多発性硬化症患者において,オクレリズマブは,臨床的進行,および MRI 上の進行を認める割合がプラセボよりも低いことに関連していた.オクレリズマブの長期の安全性と有効性を明らかにするには, 延長期間での観察が必要である.(F. Hoffmann–La Roche 社から研究助成を受けた.ORATORIO 試験: ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01194570)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2017; 376 : 209 - 20. )