多発性硬化症の clinically isolated syndrome におけるミノサイクリンの試験
Trial of Minocycline in a Clinically Isolated Syndrome of Multiple Sclerosis
L.M. Metz and Others
最初の脱髄症状(別名 clinically isolated syndrome:CIS)から多発性硬化症へと進展するリスクがミノサイクリンによって低下するかどうかを明らかにするため,有望な予備的結果をふまえて無作為化比較試験を行った.
2009 年 1 月~2013 年 7 月に,最初の脱髄症状を認めてから 180 日以内の患者を,ミノサイクリン 100 mg を 1 日 2 回経口投与する群とプラセボを投与する群に無作為に割り付けた.投与は多発性硬化症の診断が確定するまで,または無作為化後 24 ヵ月のいずれか早い時点まで継続した.主要転帰は,無作為化後 6 ヵ月以内の多発性硬化症(2005 年の McDonald 基準に基づいて診断)への進展とした.副次的転帰は,無作為化後 24 ヵ月以内の多発性硬化症への進展,6 ヵ月と 24 ヵ月の時点における MRI 上の変化(T2 強調 MRI での病変体積,T1 強調 MRI で新たに増強された病変 [増強病変] の累積数,個別病変の累積合計数 [T1 強調 MRI での新規増強病変と T2 強調 MRI での新規病変と新規増大病変])などとした.
カナダの 12 の多発性硬化症クリニックにおいて,適格であった 142 例を無作為化した.72 例をミノサイクリン群に,70 例をプラセボ群に割り付けた.患者の平均年齢は 35.8 歳で,68.3%は女性であった.無作為化後 6 ヵ月以内の多発性硬化症への進展の未補正リスクは,プラセボ群 61.0%,ミノサイクリン群 33.4%であり,差は 27.6 パーセントポイント(95%信頼区間 [CI] 11.4~43.9)であった(P=0.001).ベースラインの増強病変数で補正すると,無作為化後 6 ヵ月以内の多発性硬化症への進展リスクの差は 18.5 パーセントポイント(95% CI 3.7~33.3)であり(P=0.01),副次的転帰として評価した 24 ヵ月の時点での進展の未補正リスクの差は有意ではなかった(P=0.06).MRI に関する副次的転帰はすべて,6 ヵ月の時点ではミノサイクリン群のほうがプラセボ群より良好であったが,24 ヵ月の時点では差はなかった.投与中止と,皮疹,めまい,歯の変色などの有害事象の頻度は,ミノサイクリン群のほうがプラセボ群より高かった.
CIS から多発性硬化症への進展リスクは,6 ヵ月間ではミノサイクリン投与例のほうがプラセボ投与例より有意に低かったが,24 ヵ月間では差はなかった.(カナダ多発性硬化症協会から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT00666887)