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October 26, 2017 Vol. 377 No. 17

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大脳型副腎白質ジストロフィーに対する造血幹細胞遺伝子治療
Hematopoietic Stem-Cell Gene Therapy for Cerebral Adrenoleukodystrophy

F. Eichler and Others

背景

X 連鎖性副腎白質ジストロフィー(ALD)では,ABCD1 の変異によって ALD 蛋白が機能喪失をきたす.大脳型 ALD は,脱髄と神経変性を特徴とする.進行により神経機能の喪失,死亡にいたるが,進行は同種造血幹細胞移植によってのみ抑えることが可能である.

方 法

大脳型 ALD の男児を,単群非盲検の第 2・3 相安全性・有効性試験に登録した.スクリーニング時に病期が早期であり,MRI でガドリニウム造影効果を認める患者を適格とした.試験治療として,elivaldogene tavalentivec(Lenti-D)レンチウイルスベクターを用いて遺伝子導入した自家 CD34+ 細胞の注入を行った.今回の中間解析では,移植片対宿主病の発症率,死亡率,重大な機能障害の発生率,ならびに神経機能の変化,MRI 上の病変範囲の変化を評価した.注入後 24 ヵ月の時点で生存しており,かつ重大な機能障害がないことを主要評価項目とした.

結 果

17 例が Lenti-D 遺伝子治療を受けた.中間解析の時点で,追跡期間中央値は 29.4 ヵ月(21.6~42.0)であった.全例で生着後の細胞に遺伝子標識が認められ,既知の癌遺伝子付近への優先的挿入や,クローン性増殖は認められなかった.全例で測定可能な ALD 蛋白が認められた.治療関連死亡,移植片対宿主病は報告されず,17 例中 15 例(88%)は生存し,かつ重大な機能障害がなく,臨床症状もごくわずかであった.1 例は,神経症状が急速に悪化し,疾患進行が原因で死亡した.もう 1 例は,MRI 上で疾患進行の所見が認められたため,試験を中止し,同種造血幹細胞移植を受けたが,その後移植関連合併症が原因で死亡した.

結 論

この試験の早期結果から,早期大脳型 ALD の男児では,Lenti-D 遺伝子治療は同種造血幹細胞移植に代わる安全で有効な治療法となる可能性が示唆される.奏効期間と長期安全性を十分に評価するにはさらなる追跡調査が必要である.(Bluebird Bio 社ほかから研究助成を受けた.STARBEAM 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01896102,ClinicalTrialsRegister.eu 登録番号 2011-001953-10)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2017; 377 : 1630 - 8. )