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January 18, 2018 Vol. 378 No. 3

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脳動静脈奇形における体細胞活性化 KRAS 変異
Somatic Activating KRAS Mutations in Arteriovenous Malformations of the Brain

S.I. Nikolaev and Others

背景

孤発性脳動静脈奇形は,脳血管系における動脈と静脈の形態学的に異常な結合であり,若年成人と小児における出血性脳卒中の主な原因である.このまれな限局性障害の遺伝的原因は明らかにされていない.

方 法

体細胞変異を検出する目的で,脳動静脈奇形患者の組織検体と血液検体を解析した.主試験群の 26 例の脳動静脈奇形の組織検体と,うち 17 例のペアで採取された血液検体を用いて,エクソーム DNA 配列決定を行った.結果を確認するために,ドロップレットデジタルポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)により,主試験群の 39 例の組織検体(うち 21 例は血液検体をペアで採取)と,独立した検証群の 33 例の組織検体の解析を行った.組織検体で発見された活性化 KRAS 変異によって引き起こされる,下流のシグナル伝達経路,遺伝子発現の変化,細胞表現型を調査した.

結 果

体細胞活性化 KRAS 変異が 72 例中 45 例の組織検体で検出され,ペアで採取された血液検体 21 検体では検出されなかった.脳動静脈奇形の組織に由来する血管内皮細胞濃縮培養で KRAS 変異が検出され,in vitro では血管内皮細胞における変異 KRAS(KRASG12V)の発現によって ERK(細胞外シグナル制御キナーゼ)活性が上昇し,血管新生および Notch シグナル伝達に関連する遺伝子の発現が増加し,遊走挙動が増強されることが観察された.このような過程は,MAPK(マイトジェン活性化プロテインキナーゼ)–ERK シグナル伝達の阻害により逆転した.

結 論

解析を行った脳動静脈奇形の組織検体の大半において,活性化 KRAS 変異が同定された.このような奇形は,脳血管内皮細胞における MAPK–ERK シグナル伝達経路が KRAS によって活性化される結果として発生すると考えられる.(スイス対がん同盟ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2018; 378 : 250 - 61. )