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    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

March 29, 2001
Vol. 344 No. 13

ORIGINAL ARTICLES

  • パーフォリンおよびグランザイム B の尿中 mRNA 測定による,同種移植腎の拒絶反応の診断
    Diagnosing Renal-Allograft Rejection by Measurement of mRNA for Perforin and Granzyme B in Urine

    パーフォリンおよびグランザイム B の尿中 mRNA 測定による,同種移植腎の拒絶反応の診断

    拒絶反応は,移植腎の廃絶の主要な原因である.拒絶反応に対する標準的な検査法は,腎生検である.この研究では,パーフォリンとグランザイム B という,細胞障害性細胞が産生する 2 種類の蛋白質をコードするメッセンジャー RNA(mRNA)の尿中レベルを,急性拒絶反応が生じた腎移植患者と,拒絶反応が生じなかった患者で測定した.尿中レベルは,急性拒絶反応が生じた患者で有意に高く,連続して測定したこれらの mRNA 量を用いて,拒絶反応の発現を予測することが可能であった.
    パーフォリンは,標的細胞の細胞膜に穿孔を生じさせ,そこからグランザイム B が細胞内に入り込み,DNA を切断すると考えられている.パーフォリンの mRNA とグランザイム B の mRNA が尿中に多量に存在することは,急性拒絶反応の診断や,さらには予測にあたって,これらの物質を測定することの臨床的有用性を示唆する.

  • 水痘ワクチンの臨床的有効性
    Clinical Effectiveness of the Varicella Vaccine

    全体で 243 例の小児が水痘と診断された.水痘の小児で,発症前に水痘ワクチン接種を受けていた 56 例では,86%が軽症であった.一方,同じ水痘の小児でも,発症前に水痘ワクチン接種を受けていなかった 187 例では軽症は 48%にとどまった.水痘の小児では,23%に水痘ワクチン接種歴があったのに対して,対照群では 61%に接種歴があった(ワクチンの効果,85%).重症度のより高い水痘に対して,ワクチンの効果は 97%であった.
    水痘の弱毒化生ワクチンは 6 年前に使用が認可された.コネチカット州ニューヘブンで行われたこの研究で,研究者らは,臨床診療の場におけるワクチンの有効性を示した.現時点ではワクチンの効果の持続期間は明らかではない.しかし,水痘-帯状疱疹ウイルスは集団内で伝播を続けるので,ワクチンによって成立した免疫が自然に拡大してゆく可能性も考えられるであろう.

  • インターフェロン誘発性うつ病の予防
    Prevention of Depression Induced by Interferon

    インターフェロン誘発性うつ病の予防

    インターフェロン α は,悪性黒色腫や C 型肝炎に対する効果的な治療法であるが,その使用により,うつ病を合併する場合がある.この研究では,黒色腫に対するインターフェロン α の投与を計画した患者を評価対象として,抗うつ剤であるパロキセチンの前治療によってうつ病のリスクが減少するか否かを検討した.大うつ病の発生頻度は,パロキセチンの投与を受けた患者のほうが,プラセボの投与を受けた患者より有意に低かった.
    うつ病や神経毒性のために,患者がインターフェロン α の中断を余儀なくされることが多い.これらの副作用を予防するうえで,抗うつ剤の前治療が役立つ可能性をこの研究は示している.抗うつ剤の併用が,インターフェロン α の効果に影響を及ぼすか否かを明らかにすることが,今後重要であろう.

  • Helicobacter pylori 感染患者における上部消化管出血の再発予防
    Preventing Recurrent Upper Gastrointestinal Bleeding in Patients with Helicobacter pylori Infection

    <i>Helicobacter pylori</i> 感染患者における上部消化管出血の再発予防

    上部消化管出血を生じた患者の多くが,循環器疾患の予防のための低用量アスピリンや,筋骨格系疾患に対する他の非ステロイド系消炎剤(NSAIDs)の服用を継続している.こうした患者で,Helicobacter pylori 感染が出血の再発に対する危険因子であるか否かは明らかでない.低用量アスピリンの服用を継続していた患者では,H. pylori 感染の除菌とオメプラゾールによる治療は,再出血予防に対する効果は同等であった.しかし,別の NSAID(ナプロキセン)を継続服用していた患者では,オメプラゾール治療のほうが H. pylori の除菌よりも,再出血予防のうえで優れていた.
    アスピリンや,ナプロキセンなどの他の NSAIDS による利益の可能性と,上部消化管出血リスクの上昇とのバランスをいかに取るべきかは明らかではない.H. pylori 感染も出血の危険因子なので,H. pylori の除菌によって,アスピリンやナプロキセンを服用中の患者における再出血のリスクを予防できるか否かを評価したことは理にかなっている.その答えは明瞭である.すなわち,低用量アスピリンによる出血の再発予防には,H. pylori の除菌はオメプラゾールによる治療と同等の効果があるが,ナプロキセンによる再出血の場合には,同等の効果はない.

REVIEW ARTICLES

  • プライマリケア:皮膚扁平上皮癌
    Primary Care: Cutaneous Squamous-Cell Carcinoma

    プライマリケア:皮膚扁平上皮癌

    皮膚の扁平上皮癌は頻度の高い問題であり,罹患率は過去 30 年間で急速に上昇した.紫外線への曝露が,このタイプの癌の原因としてもっとも一般的である.通常この疾患は,外傷を受けた皮膚や,慢性潰瘍や放射線皮膚炎など持続的な障害のある皮膚に発生する.

  • 薬物療法:HIV 治療薬と日和見感染症治療薬の相互作用
    Drug Therapy: Interactions among Drugs for HIV and Opportunistic Infections

    薬物療法:HIV 治療薬と日和見感染症治療薬の相互作用

    HIV 感染患者は,ほぼ全例が,ウィルス複製の抑制,日和見感染の治療や予防,他の障害の治療,健康状態の維持を目的として多剤療法を受ける.これらの薬剤の多くは,他の薬剤の吸収,輸送,代謝,クリアランスを変化させる.こうした相互作用により,特定の薬剤の効果や毒性が低下したり上昇したりする可能性がある.この包括的な総説は,HIV 感染患者に頻繁に投与される薬剤間の相互作用について,既知の知見を要約している.また,こうした相互作用を予防,緩和する方法や,(たとえば,薬剤投与量の減量を行うことで)患者の利益のために活用する方法について議論している.