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    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

June 14, 2001
Vol. 344 No. 24

  • ニューヨーク市地域における西ナイルウイルス
    West Nile Virus in the New York City Area

    ニューヨーク市地域における西ナイルウイルス

    1999 年 8 月,ニューヨーク市保健局は,筋力低下を伴う脳髄膜炎症例の集積を確認した.能動的監視により,同年 8 ~ 9 月の期間に,西ナイルウイルス感染症の入院患者を 59 例同定した.発病率は年齢とともに急激に上昇し,患者 7 例が死亡した.患者の 27%に筋力低下を認め,6 例に弛緩性麻痺を認めた.
    今回の集団発生は,西半球における最初のアルボウイルス検出事例である.ウイルスは,その後米国東海岸の鳥類と蚊からも検出されている.ウイルス性髄膜炎や脳炎の患者で,とりわけ高齢患者や筋力低下を伴う患者には,西ナイルウイルス感染症の診断を考慮すべきである.

  • 臍帯血の提供を受けた成人レシピエントにおける造血細胞の移植と生存
    Hematopoietic Engraftment and Survival in Adult Recipients of Umbilical-Cord Blood

    この研究では,生命を脅かすような血液疾患の成人が,強力化学療法または全身放射線照射の実施後に,非血縁ドナー由来の臍帯血による造血回復治療を受けた.レシピエントの多くに,2 個以上の HLA 不適合が存在した.しかし,ほとんどの患者で細胞が生着し,移植片対宿主病の発現率はそれほど高くなかった.
    臍帯血は,小児に対する造血回復療法に用いられて成功してきた.成人に対する適用の可能性は,臍帯血 1 単位当りの造血幹細胞数が少ないため,これまで疑いがもたれてきた.この研究は,ほかにドナーが存在しない患者に対する幹細胞の供給源としての,臍帯血の利用可能性を示している.臍帯血は,通常は廃棄されてしまうが,小児と成人に対する治療的応用性がある.

  • 家族性ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群の原因遺伝子の同定
    Identification of a Gene Responsible for Familial Wolff-Parkinson-White Syndrome

    家族性ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群の原因遺伝子の同定

    ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群は,上室性頻拍症の原因として一般的であり,心房と心室の心筋を結ぶ副伝導路の存在により,心室の異常早期興奮が生ずる.本疾患の原因は不明である.ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群の 2 家系を対象とするこの研究では,第 7 染色体上のプロテインキナーゼ遺伝子(PRKAG2)に,おそらく疾患の原因とみられる突然変異を同定した.
    遺伝子欠損が,心臓発生の途中で通常は消失する副伝導路を残存させ,また上室性不整脈の発症にも関与するという仮説を,著者らは提示している.今回の重要な知見は,理解困難な本症候群の病理発生に対する洞察を与えるものであり,いずれは新規の治療法に結び付く可能性もある.

  • 新生児における尿素回路と一酸化窒素
    The Urea Cycle and Nitric Oxide in Newborns

    新生児における尿素回路と一酸化窒素

    一酸化窒素には,強力な肺血管拡張作用があり,肺動脈圧の調節に役割を果していると考えられている.呼吸困難の新生児のうち,持続性肺高血圧症を伴う患児では,アルギニン(一酸化窒素の重要な前駆体)の血漿濃度が,肺高血圧症のない患児よりも低かった.肺高血圧症を伴う新生児では,尿素回路に関与する酵素の遺伝的変異が,アルギニン産生を制限している可能性があることを,研究者らは示唆している.
    新生児の肺高血圧症は,頻度は高くないが,10%を超える症例が死亡する.一酸化窒素の吸入が本疾患の治療として有効なことから,内因性一酸化窒素の不足が,新生児における肺血管抵抗の上昇の原因である可能性が考えられる.今回の研究は,尿素回路に関与する酵素の遺伝的変異が,内皮細胞が一酸化窒素を産生するために用いるアミノ酸であるアルギニンの産生を制限している証拠を見出した.

  • 臨床診療:安定型冠動脈疾患に対する非侵襲的検査
    Clinical Practice: Noninvasive Tests for Stable Coronary Artery Disease

    臨床診療:安定型冠動脈疾患に対する非侵襲的検査

    58 歳の女性が,労作時の胸部不快感のために受診した.患者の評価をどのように行うべきだろうか? 今回の臨床診療の論文は,冠動脈疾患患者に対する種々の非侵襲的検査法の利点と欠点を考察し,臨床所見に基づく推奨検査を示している.著者らは,安定型冠動脈疾患の評価における,負荷心電図,核磁気画像検査,ストレス心エコー検査の相対的利点を議論している.

  • 最近の概念:過敏性腸症候群
    Current Concepts: The Irritable Bowel Syndrome

    最近の概念:過敏性腸症候群

    過敏性腸症候群は,米国の消化器専門医が下す診断として,もっとも頻度が高い.年間の直接医療費は約 80 億ドル,間接費用は 250 億ドルにのぼる.この総説は,頻度の高い本疾患の病態生理に関する,現在の情報をまとめている.症状に応じた治療が,本症候群の患者の疼痛と病苦を緩和する助けとなりうる.検査の繰り返しは避けるべきである.