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    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

February 22, 2001
Vol. 344 No. 8

ORIGINAL ARTICLES

  • 遺伝性乳癌における遺伝子発現プロファイル
    Gene-Expression Profiles in Hereditary Breast Cancer

    相補的 DNA(cDNA)のマイクロアレイの利用は,組織で発現する何千もの遺伝子を明らかにする新しい方法である.cDNA 6,512 個のマイクロアレイを用いて,乳癌組織における遺伝子発現の全体的なパターンを検討した.乳癌組織は,乳癌感受性が上昇する BRCA1 または BRCA2 遺伝子の体細胞遺伝子変異がある患者と,散発性乳癌の患者から採取した.BRCA1 変異により生じた腫瘍における遺伝子発現のパターンは,BRCA2 変異に関連する腫瘍における遺伝子発現のパターンと,明らかに区別できる相違を示していた.
    cDNA マイクロアレイの利用は,とりわけ癌組織の研究において,一般的になりつつある.遺伝子発現のパターンによって,BRCA1 関連,BRCA2 関連,散発性乳癌の症例を区別しうることをこの研究は示唆している.おそらくより興味深いのは,BRCA1BRCA2 という二つの変異遺伝子が,異なる分子学的経路を通して乳癌を生じさせることを,今回の結果が示唆している点である.

  • アルコール脱水素酵素の遺伝的変異と心筋梗塞のリスク
    Genetic Variation in Alcohol Dehydrogenase and Risk of Myocardial Infarction

    アルコール脱水素酵素の遺伝的変異と心筋梗塞のリスク

    アルコール脱水素酵素(ADH)は,アルコール代謝の鍵となる酵素であり,三種類の異性体が存在する(ADH1,ADH2,ADH3).ADH3 には二種類の遺伝形質があり,一方はエタノールをゆっくりと酸化し,他方は急速に酸化する.この研究では,エタノールの酸化速度が遅い対立遺伝子がホモ接合で,しかもアルコールを毎日飲用する男性では,週に 1 杯未満しか飲用せず,しかもエタノールの酸化速度が速い対立遺伝子がホモ接合の男性と比べて,血漿 HDL 濃度が高く,心筋梗塞のリスクが低かった.
    中等度のアルコール飲用によって,冠動脈疾患のリスクが低下することが知られている.しかし,遺伝的に決定される体質であるアルコールの酸化速度が遅い男性の方が,酸化速度が速い男性よりも,アルコール飲用の利益が大きいことをこの研究は示している.

  • 急性脳損傷後における低体温療法の有効性の欠如
    Lack of Effect of Hypothermia after Acute Brain Injury

    中等度の低体温療法によって,急性外傷性脳損傷の患者の転帰を改善しうるか否かが,議論されてきた.この研究では,重度の脳損傷患者 392 例に,損傷から 6 時間以内の低体温導入,または通常体温による治療が行われたが,6 ヵ月後の追跡調査では転帰に差がなかった.
    外傷性脳損傷患者における神経組織の障害の拡がりを,低体温療法によって減少しうるという見解は魅力的なもので,人間と動物を対象とするいくつかの研究で支持されていた.この大規模な研究の対象となった患者では,損傷が重度だったために,低体温を含むいかなる治療も有効にはならなかった可能性がある.あるいは,低体温に到達する時間が遅すぎたのかもしれない.

  • 腸重積と経口ロタウイルスワクチン
    Intussusception and Oral Rotavirus Vaccine

    腸重積と経口ロタウイルスワクチン

    ロタウイルスは,乳幼児の重症胃腸炎の原因として頻度が高い.新規の経口 4 価ロタウイルスワクチン(RotaShield)の投与後に腸重積が発症した乳児 9 例の報告の後に,この調査を開始した.症例対照研究では,腸重積のリスクはワクチン投与後に上昇し,とくに初回投与後 3~14 日に上昇した(オッズ比,21.7).2 回目投与後は,リスクの上昇はより小さかった.
    この研究を根拠に,米国では,このロタウイルスワクチンの使用が中止されている.腸重積のリスクは,絶対値としては小さいので,ロタウイルス感染による死亡率が高い発展途上国では,今回新たに認知されたリスクよりも,依然としてワクチンの利益に重点がおかれるであろう.

BRIEF REPORT

  • 家族性間質性肺疾患に関連した肺サーファクタント蛋白 C 遺伝子の変異
    A Mutation in the Surfactant Protein C Gene in Familial Interstitial Lung Disease

    家族性間質性肺疾患に関連した肺サーファクタント蛋白 C 遺伝子の変異

    この報告は,祖父が間質性肺疾患に一致する疾患を有し,母親とその児が間質性肺疾患であった一家族について記述している.母親とその児の肺サーファクタント蛋白 C(SP-C)遺伝子の変異を検索したところ,双方で,イントロン 4 で G→A の変異が生じていた.成熟した SP-C は,児の肺組織では検出されず,母親の肺組織では微量に検出されたのみであり,SP-C の欠如が間質性肺疾患の病理発生に何らかの役割を果していることを示唆していた.
    間質性肺炎の基本的な病理発生についてはほとんど知られていないので,疾病の原因に関するいかなる手がかりも,このパズルを解く助けになるであろう.今回の研究者らが示したデータは,SP-C の欠損が,間質性肺疾患の原因である可能性を指摘するものである.

REVIEW ARTICLE

  • 薬物療法:新生児の高ビリルビン血症
    Drug Therapy: Neonatal Hyperbilirubinemia

    新生児では,ビリルビンの産生速度が速く,ビリルビンの代謝とクリアランスの速度が遅いため,一過性の高ビリルビン血症が非常に多い.病的な高ビリルビン血症は,溶血性貧血の新生児や,ビリルビン代謝障害を特徴とする肝障害の新生児に生ずる.ビリルビンは,とりわけ神経に対する毒性があり,核黄疸,授乳不良,筋低緊張と過緊張,痙攣,および死亡を引き起すことがある.この論文では,新生児における病的な高ビリルビン血症の病理発生と危険因子,重度の高ビリルビン血症の予測法に関する現状,およびこの疾患の予防と治療について概説している.