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    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

July 12, 2001
Vol. 345 No. 2

  • ライム病予防のためのドキシサイクリン単回投与
    A Single Dose of Doxycycline to Prevent Lyme Disease

    ライム病予防のためのドキシサイクリン単回投与

    ライム病の病原体は,Ixodes scapularis マダニの咬傷で伝播するが,咬傷後の 抗菌薬による予防治療がライム病予防の手段として有効か否かは明らかでない.この無作為割付け,二重盲検,プラセボ対照臨床試験では,対象者の半数がドキシサイクリン 200 mg の単回投与を受けた.咬傷部位に遊走性紅斑が生じたのは,ドキシサイクリンの投与を受けた群では 0.4%にすぎなかったが,プラセボの投与を受けた群では 3.2%であった(p = 0.04).
    今回の大規模試験は,少なくとも広く蔓延している地域では,ライム病予防のためのドキシサイクリン単回投与が有効であることを示している.しかし,感染率はプラセボ群でも低く,悪心と嘔吐が治療の副作用として高頻度であった.

  • 慢性ライム病に対する抗菌薬の延長
    Prolonged Antibiotics for Chronic Lyme Disease

    慢性ライム病に対する抗菌薬の延長

    急性ライム病に対する前治療にもかかわらず疼痛と倦怠感が持続する患者に対して,抗菌薬治療の延長が有効であるという意見がある.無作為割付け二重盲検臨床試験によって,血清陽性の患者と血清陰性の患者が,1 ヵ月の静注セフトリアキソンとその後 2 ヵ月の経口ドキシサイクリン,あるいはそれぞれに対応するプラセボの投与を受けた.中間解析後に臨床試験は中止された.評価可能な患者 115 例では,治療終了後 6 ヵ月の時点で,健康関連 QOL に有意な群間差を認めなかった.
    二つの臨床試験は対象者数が少ないため,統計的検出力には限界がある.しかし今回のデータは,慢性ライム病に対する抗菌薬治療の延長に大きな利益がある可能性はほとんどないことを示している.これらの研究で疾病による顕著な障害が確認されている.しかし,抗菌薬治療の有無にかかわらず,患者の症状は改善ないし悪化した.

  • 慢性拒絶反応におけるレシピエントの間葉細胞による同種腎移植片の新生内膜および尿細管間質浸潤
    Neointimal and Tubulointerstitial Infiltration of Renal Allografts by Recipient Mesenchymal Cells during Chronic Rejection

    慢性拒絶反応におけるレシピエントの間葉細胞による同種腎移植片の新生内膜および尿細管間質浸潤

    組織の再構築は,同種腎移植片の慢性拒絶反応にみられる顕著な特徴である.研究者らは,女性ドナーからの同種腎移植片の提供を受けた男性レシピエントにおいて,移植片の生検標本中の Y 染色体を検索することで,再構築の過程に関与する間葉細胞の起源を同定した.こうした患者 6 例では,間葉細胞の最大 38%に Y 染色体が含まれていた.
    これらのデータは,慢性拒絶反応のさいに腎移植片に生着可能で,移植片の傷害に対する反応に関与する間葉細胞が,循環血中に存在することを示唆している.

  • 居住地の近隣環境と冠動脈心疾患の発症率
    Neighborhood of Residence and Incidence of Coronary Heart Disease

    人の居住地が,喫煙,食事,運動などの健康関連行動に影響する可能性がある.この研究では,住民の財産,収入,教育,職業などの近隣の特性と,冠動脈心疾患との関連を調査した.冠動脈心疾患に関する確立した危険因子と,住民個人の収入,教育,職業を補正した分析により,不利な近隣地域での居住が,こうしたほかの要因とは独立して,冠動脈心疾患の発症率の上昇と関連することが示された.
    今回の結果は,居住地が人の健康に影響する可能性を示している.健康的な食物の入手しやすさや余暇施設の増加,たばこ広告の削減などによる近隣環境の変化が,健康の改善を推進する手助けとなる可能性がある.

  • 最近の概念:高山病
    Current Concepts: High-Altitude Illness

    最近の概念:高山病

    毎年,何百万人もの人々が高地に旅行する.そのため,急性高山病は公衆衛生的な問題となっている.この総説は,急性高山病,高地脳浮腫,高地肺浮腫の患者を見分けて治療する方法を解説している.早期発見と迅速な治療介入が,決定的に重要である.著者らは,予防対策についても説明している.

  • 医学の進歩:ライム病
    Medical Progress: Lyme Disease

    マダニ咬傷により伝播する Borrelia burgdorferi スピロヘータ感染症は,現在 15 を超える州で集団発生し,多様な臨床的様相を示す.一過性で拡張性の皮膚病変(遊走性紅斑)に引き続き,関節,神経系,心臓への全身的関与がみられる場合がある.この論文では臨床的様相と診断法の詳細な解説に加えて,抗菌薬治療と予防の側面も考察されている.