The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み
  • 目 次
  • This Week at NEJM.org

    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

April 4, 2002
Vol. 346 No. 14

ORIGINAL ARTICLES

  • 神経芽細胞腫のスクリーニング検査
    Screening for Neuroblastoma

    神経芽細胞腫のスクリーニング検査

    神経芽細胞腫は,小児期早期におけるもっとも頻度の高い頭蓋外の固形腫瘍であり,尿中カテコールアミンの検出によって症状発現前の段階で同定できる.定期的な神経芽細胞腫のスクリーニング検査が,この疾患による死亡率を低下させうるのかどうかは不明である.この研究では,5 年間(1989 年 5 月~1994 年 4 月)に,カナダのケベック州で生まれた小児の両親に対し,小児が 3 週齢および 6 ヵ月齢の時に神経芽細胞腫のスクリーニング検査を申し出た.スクリーニング検査開始後,9 年間の神経芽細胞腫による累積小児期死亡率は,ケベックコホートのほうが複数のスクリーニング検査を実施していない北米コホートに比べて低いということはなく,スクリーニング実施前のケベックにおける率とほぼ同じであった.
    神経芽細胞腫の新生児スクリーニング検査は,この疾患による死亡率を低下させるとは考えられず,正当とは認められない.

  • 1 歳時の神経芽細胞腫スクリーニング検査
    Neuroblastoma Screening at One Year of Age

    1 歳時の神経芽細胞腫の尿スクリーニング検査が,播種性疾患の発症率およびこの種の腫瘍による死亡率を低下させるかどうかを評価するため,著者らはドイツの 6 州の小児約 150 万例のスクリーニング検査を実施した.対照としたドイツの他の 10 州の小児と比較すると,スクリーニング群の小児は神経芽細胞腫の診断率はより高かったが,ステージ 4 の神経芽細胞腫の発症率や神経芽細胞腫による死亡率は低下しなかった.
    1 歳時の神経芽細胞腫のスクリーニング検査は妥当ではなく,治療していなければ自然に消退すると予測される症例を不必要に治療することになる可能性がある.

  • スリンダクによる家族性腺腫性ポリポーシスの化学的一次予防
    Primary Chemoprevention of Familial Adenomatous Polyposis with Sulindac

    非ステロイド性抗炎症薬であるスリンダクは,大腸腺腫様ポリポーシス(APC)遺伝子の変異によって引き起される家族性腺腫性ポリポーシスにおけるポリープの消退を導くことができる.この研究では,スリンダク療法が,病原性変異 APC 遺伝子をもつが検出可能な腺腫のない若年保因者における大腸ポリープの発生を予防できるかどうかを検討した.プラセボと比較して,スリンダクは新たなポリープの数と大きさにまったく影響を与えなかった.
    この二重盲検プラセボ対照試験の結果は明らかである.今回用いた用量では,スリンダクは APC 遺伝子の保因者における腺腫を予防しなかった.家族性腺腫性ポリポーシス患者のほぼ全例で結腸直腸癌が発生することから,結腸切除は依然として,唯一の有効な予防的処置である.

IMAGES IN CLINICAL MEDICINE

  • Images in Clinical Medicine:血行性嫌気性骨髄炎
    Images in Clinical Medicine: Hematogenous Anaerobic Osteomyelitis

    Images in Clinical Medicine:血行性嫌気性骨髄炎

    42 歳の男性に,発熱,体重減少,寝汗,および右腕と大腿の疼痛と腫脹の病歴があった.外傷歴はなかった.

  • Images in Clinical Medicine(Web 限定):陶器様胆嚢
    Images in Clinical Medicine (Web Only): Porcelain Gallbladder

    Images in Clinical Medicine(Web 限定):陶器様胆嚢

    45 歳の女性が,7 日間の発熱と右上腹部の疼痛により入院した.

SPECIAL ARTICLE

  • 重症患者の治療選択への理解
    Understanding the Treatment Preferences of Seriously Ill Patients

    Special Article:重症患者の治療選択への理解

    60 歳以上で,余命が限られた患者全 226 例に延命治療に関する選択について尋ねた.11%の患者は,重荷が大きい場合,治療を望まないと答えた.多くの患者は,転帰が生存しているものの重度の機能または認知障害を伴う場合,たとえ耐えがたい治療でなくとも治療は望まないと答えた.
    終末期のケアについての議論では,患者が特別な医学的介入を望んでいるかどうかにしばしば焦点が置かれる.仮定的なシナリオを用いて,患者の選択が死よりむしろ医学的介入の負荷と重度有害転帰の可能性の両方に大きく影響を受けることをこの研究は示している.

REVIEW ARTICLES

  • 最近の概念:飛行中の医療事象への対応
    Current Concepts: Responding to In-Flight Medical Events

    民間航空機が飛行中,乗客に症状が発症した場合,しばしば医師は助けを求められる.この“Review Article”では,飛行機旅行中に起るもっとも一般的な問題を取り扱う.著者らは,そのような事象への対応方法を勧め,航空機が飛んでいるあいだに医師や乗務員が利用可能な機材などの資源について述べる.

  • 医学の進歩:生体ドナーからの肝移植
    Medical Progress: Living-Donor Liver Transplantation

    医学の進歩:生体ドナーからの肝移植

    肝移植が必要な患者数は,死体から得られる肝臓の数を大幅に上回っている.そのため,生体ドナーからの肝移植に対する注目が増している.2001 年にはそのような手術が計 509 例行われた.手術では,罹患肝臓を全摘後,ドナーの肝右葉をレシピエントに移植する.今後数年で,レシピエントの転帰改善とドナーへのリスクを比較検討することにより,この手術の役割が決定されるであろう.